子ども歳時記151 スキンシップのすすめ/中村 利奈(『あなたのことがだいすき』えがしら みちこ/文・絵、西原理恵子/原案、KADOKAWA)

子ども歳時記『スキンシップのすすめ』中村 利奈

saijiki151
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秋から冬へとさしかかり、肌寒い日が増えてきましたね。そのせいか私がお手伝いに行っている子育て広場では、遊びに来てくれる親子の数が増えてきているように感じます。お子さんが遊んでいる側でお母さんとお話ししていると、いま悩んでいることや困っていることを相談してくれることがあります。お子さんの食事や睡眠、成長に関することなどが多いですが、お母さん自身の悩みでは、自由な時間を全く取れない生活がつらい、という方が多いように感じます。できるだけゆっくりお話しを聞き、たずねられれば私自身の経験をお伝えすることもありますが、「これが正解」ということをお伝えできることは、まずありません。

スタッフ間でもよく話題になるのが「子育てに正解はない」ということです。私自身も18歳になった息子の子育てを思い出しては、当時の対応が間違っていたように感じ、しても仕方のない反省をすることが多々あります。落ち込んでしまうこともありますが、最近は、愛情だけは頑張って注いだのだからよしとしよう、と思うようにしています。

私がそう考えるきっかけになった本があります。『あなたのことがだいすき』(えがしらみちこ/文・絵、西原理恵子/原案、KADOKAWA)という絵本です。やさしいタッチの絵と、子育て中の母親のやるせない気持ちを上手に表現している言葉に共感があふれます。子育て広場に来るお母さんたちにも、とても人気のある絵本です。≪「たいへんなのは いまだけよ」っていうけど 「いま」なんとかしてほしいの≫……本当に、何度思ったことでしょう。絵本は、≪だいすき≫とお母さんが子どもを抱きしめる絵で終わっていますが、子どもをぎゅっと抱きしめると、疲れた自分の心がふわっとほぐれていったことを思い出します。

親子のスキンシップには、様々な効用があるそうです。ストレスが和らぐ、情緒が安定する、親子の絆が深まる……良いことばかりですね。スキンシップ研究の第一人者、山口創先生によると、その効果は「ふれられる側」だけでなく「ふれる側」にも同じだけあるそうですから、子どもを抱きしめることで親も癒されるということです。スキンシップは正解のない子育てにおいて“一筋の光”なのかもしれません。そしてその効果は、親子だけでなく大人同士でも、また、手をつなぐ、肩に手をかけるなどの簡単なスキンシップでも同様にあるそうです。

寒さが深まっていくこの時期は、スキンシップに最適な季節ですね。親子で、家族で、はたまた友人と優しくふれあい、寒さや疲れで縮こまってしまった心をそっとほぐしてみませんか。(なかむら・りな)

中村 利奈
中村 利奈