子ども歳時記140 風の時代を生きる/北 素子 『100』(名久井直子/さく、井上佐由紀/しゃしん、福音館書店)

新しい年が始まりました。西洋占星術の世界では、2020年末に約200年に一度の大転換期に突入したといわれています。金銭的な成功や所有、権威など、かたちあるものを重んじる物質主義の“土の時代”から、情報、知性、コミュニケーションといった目に見えないものを重視し、個人が自分なりの価値観で選択していく“風の時代”へ。

 

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、このパラダイムシフトの前兆ともいわれています。多くの方が犠牲になり、世界構造そのものが変わりました。住まいや仕事、コミュニケーション手段など、コロナ前には想像もしなかったスタイルが定着しつつあります。

 

東京オリンピック2020では、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」という3つの基本コンセプトが掲げられていました。また、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指すという国際目標のことを指す、“SDGs”も身近になりました。このように、自由で多様な価値観を認め合うことの大切さを、社会全体で強く意識していこうという流れになってきています。

 

わたしの職場である児童発達支援事業所には、療育の観点から支援が必要であると認められた未就学のお子さんが通っています。発達障害の子は、通常の発達の人と比べて発達が劣っているのではなく、発達の様子が異なっているという考えの下、治療や訓練によって修正するのではなく、子どもが本来持っている優れた部分に注目をして、その力が十分発揮できる環境を整え、彼らが社会と共生していくことを目指した支援を心掛けています。

 

 輪ゴム、貝がら、どんぐりなど、それぞれ100ずつ集めて撮影された写真絵本、『100』(福音館書店)は、子どもたちに人気です。数字やマークが好きなA君は、金魚が100匹いるページがとくにお気に入り。手を叩いて喜んでいます。

 

 B君のお気に入りは、「きんたろうあめが 1」のページをめくってからの「100」。ひとりで何度もページを繰って眺めています。C君は、各ページで自分の知っていることを話したくて先生と読みあうことを楽しみにしています。見開きいっぱいに散らばった100個ひとつひとつ異なったものが集い、調和する美しさ。表紙の100個のカラフルな風船に、“風の時代”を生きる自由と軽やかさ感じながら、誰もが唯一無二の大切な存在であり尊重される社会を願います。

 

(きた・もとこ)

子ども歳時記127『自分のための絵本』北 素子

松本 直美
北 素子

 金融庁が発表した 「95歳まで生きるには夫婦で約2000万円の蓄えが必要である」とする老後資金報告書に批判が相次ぎ、公的年金制度に対する不満や、先行きへの不安が国民の問に広がりました。 この数字についてはともかく、我が国は人生100年時代に向けてすでに動き出しています。

 学校教育を終え、就職し、家庭を持ち、定年まで勤めあげ、年金を頼りに暮らしていく人生を考える時代ではなくなりました。 進学、就職、結婚、子どもをもっかどうかも最終的には個人が選択できる時代へ。”正解”も”ゴール”もないのですから。わたしたちは100歳という数字を前に、どのように生きていけぱいいのでしよう。

 「人生とは」 「幸せとは」 「生きることの意味とは」…。書店には、人生論、哲学、倫理学についての書籍がたくさん並んでいます。 しかし、絵本や児童文学作品を存分に味わったことのある人なら、絵本や児童書にこそ、人生の大切なことが描かれていることをご存じでしょう。

 そして、持っていた袋から衣装や小物を出して芸をしました。 それはこれまでにないほど見事な芸でした。 そして彼は …… 。 そこで起こつた奇跡は …… 。

神の道化師
『神の道化師』
(トミー・デ・パオラ /さく・え、
ゆあさ ふみえ /やく、ほるぷ出版)

 フランスに伝わる古い民話をもとにしたこのお話。人生を考えることは、悠久の歴史課題なのでしょう。

 人は様々な体験を通して、日々変化していきます。 一生で直接体験できることは限られているからこそ、問接体験でイメージする力をもっことが『 人生の豊かさにつながるはず。
人生100年時代を生きていく楽しみとして、自分のために絵本を読むのも、いいですよね。
(きた・もとこ)