障害を持つ子とその周囲の人たちとの出来事を描いた物語集『ぼくのお姉さん』(丘修三/著、かみやしん/絵、偕成社)という本があります。 養護教諭の著者は、この本の中で「差別はいけません」という教訓めいたことはひとつも書いていません。
ですが、障害を持つ子とその家族、周囲の人々の苦労や葛藤、そして幸せを5編の物語の中でリアルに描いています。
障害を持つ子たちの精いっぱいの生き方とそれをゆっくりと見守る家族の姿は、些細なことでよその子と比べてはわが子を追い立ててしまう私に「のんびり行こうよ」と語りかけているようでした。
東京女子医科大学教授の小西行郎氏は著書『早期教育と脳』(光文社新書)の中で「障害を持つことで、人生が幸か不幸かという問題はあります。
障害を持つ子の親の苦労は私たちの想像を遥かに超えるものがあります。しかし、周囲の人間に強烈な影響力を与える彼らの存在は、IQや学力だけではけっしてはかることのできない生きることの意味を実感させるものであり、人間の発達のすごさを感じさせてくれるのです」と書いています。
「できないこと」から出発する教育は「できることがすべて」の教育に疑問を投げかけ、また「自分らしく生きる」とはどういうことかを、教えてくれているのかもしれません。
(はまもと・かおり) |