松居直先生 ありがとうございました


松居 直(まつい ただし)

1926年京都府生まれ。児童文学者。2022年11月2日老衰のため死去、96歳。

同志社大学卒業後、1952年福音館書店の創業に参画し同社の編集部長、社長、会長、相談役を歴任。

「こどものとも」を創刊し、編集長として赤羽末吉、長新太、堀内誠一、安野光雅、加古里子、中川李枝子ら多くの絵本作家を世に送り出した。

著書に絵本『ももたろう』『だいくとおにろく』『ぴかくんめをまわす』(福音館書店刊)など多数。

NPO法人「絵本で子育て」センターが主催する「絵本講師・養成講座」の講師を第1期から第12期まで12年間務めた。

松居直先生ありがとうございました……

森 ゆり子(NPO法人「絵本で子育て」センター理事長)

松居直先生、ありがとうございました。

NPO法人「絵本で子育て」センターが開講しております「絵本講師・養成講座」の第1期から、松居直先生は講師をお引き受けくださいました。

突然のお願いにもかかわらず「とても素敵な講座だね」とご快諾いただきました。

それから、第12期(2015年度)までの長いお付き合いとなりました。しかも、芦屋会場・東京会場・福岡会場(現在は大阪・東京の2会場のみ開催)の3ヵ所ということで1年に3度もお会いする機会がありました。

ある時は、奥さま同伴でお見えになられました。奥さまは、旧知の間柄の中川正文先生の奥さまとご一緒に喫茶店で歓談されながら、先生のご講演が終わるのをお待ちになっておられました。奥さまを気づかう松居先生の優しいお人柄とお二人の仲睦まじいご様子を垣間見た思いでした。

拙著『絵本を読んであげましょう』を出版した年のご講演の際は、打ち合わせの時に「私の講演のなかでこの本を紹介しますね」とおっしゃってくださいましたが、ご講演が始まるとすっかり忘れておしまいになって、ご講演後に「あっ」と言いながら笑っておられました。

また、中川先生が急に入院された第8期の時は、中川先生と交代して東京会場第1編に出講してくださいました。そして回復されないまま旅立ってしまわれた中川先生の担当の第4編にも松居先生が出講してくださったのです。そこまでしてくださるとは……本当に有難くて恐縮したものでした。2013年4月には、当センターより『こども えほん おとな』というタイトルで講演録を出版させていただきました。これは、2012年5月26日の東京会場にて、「絵本のよろこび」と題して松居直先生にご講演いただいたときのものです。

最後にお会いしたのは2015年7月25日の東京会場でのご講演です。体調がいつ悪くなるかもしれないから「絵本で子育て」センターに迷惑をかけるかもしれない、と言われました。急に出講できなくなっても大丈夫ですから、とご無理をお願いして講師を引き受けていただきました。当日は、スタッフがお宅までお迎えに参りまして、終了後も同様にご自宅までお見送りさせていただきました。13期もお迎えにきますから……とお願いしてその日はお別れいたしました。それから、お電話でお声をお聞きする機会はありましたが、お会いすることはありませんでした。2011年10月13日、中川正文先生が亡くなられました。そして2022年11月2日に松居直先生も……。「絵本で子育て」センターの活動を長年応援してくださった先生がお二人もいなくなってしまいました。

「絵本の読み聞かせをするということは、家庭にことばを取り戻すということなのです」。今後は、先生からいただきました教えを「絵本で子育て」センターの活動のなかで活かしていく決意でおります。そうすることが、「私でお役に立てるなら……」とおっしゃってくださった先生のお気持ちに報いることだと考えております。松居直先生、ありがとうございました。

(もり ゆりこ)

松居直先生、ありがとうございました。