4年の歳月経てもなお思い出される笑顔と言葉に背中を押され前を見る
森 ゆり子(NPO法人「絵本で子育て」センター理事長)
「故中川正文先生を偲ぶ会」が2015年10月12日(月)〜13日(火)の二日間にわたって NPO法人「絵本で子育て」センター事務局で開催されました。先生が向こうに行かれてもう4年になるのですね。普段から事務局のあちこちには、先生の写真があります。その写真を入り口や廊下(と呼べるかどうか)や急ごしらえの祭壇に並べ直して、参会者を迎えました。帽子を被りにっこり笑っている写真がチャーミングで、私たちも思わず微笑み返してしまいます。
12日は、祝日(体育の日)ということもあり、たくさんの方がお越しくださいました。ホームページを制作してくださっておられる鈴木忠夫氏や「週刊事実報道」編集部の三島史路氏、幹事の皆さんをはじめ11期生の方も。家族5人での参加もありました。2才と4才、かわいい盛りの子どもの声が(時には泣き声が)事務局のゆったりとした穏やかな空気を震わせました。中川先生、ごめんなさい。今日の主役は花ちゃんと岳くんの二人になりました。
テーブルの上には先生の絶筆『きつねやぶのまんけはん』(NPO法人「絵本で子育て」センター)にちなみ、「いなり寿司」がお皿に盛られています。でも先生は「僕はキツネよりタヌキのほうが好きなんだ」とおっしゃっていましたね。厳しさと優しさ、そしてユーモアいっぱいの作品は先生のお人柄をそのまま映し出したものでした。
メインテーブルの横で、先生の思い出話に花が咲いていました。5~6回目にやっと名前を覚えていただいたこと。「ここだけの話だけど……」というお話は大勢の方がお聞きしており、ちょっとがっかりしたこと。『ごろはちだいみょうじん』(福音館書店)など多数の著書があり、京都女子大学の人気教授でもあった中川正文先生とお話ができて感激の涙を流したところ、「僕が泣かしたんじゃあないよ」と言い訳されたこと。ごろはちの絵が描かれている七宝焼きのネクタイピンを「ほら!」、といたずらっ子のように自慢げに見せてくださったこと。一番好きだと教えていただいた絵本が人によって違っていたこと(自分にだけ本当のことを教えてくださったと思うのです)。一人ひとりの胸のうちにある先生との大切な思い出を披露しあいました。先生と一度もお会いしたことのない会員も増えてきており、その方たちは興味津々に聞き入っておられました。
翌13日は、朝10時から中学3年生の少年が訪れました。皆さんが集まるまで読書に熱中していました。私たち10人ほどの大人にほどよい相槌を打ったり苦笑したり、相手をしてくれてありがとう。爽やかな少年を目の当たりにすることは大変嬉しいことです。先生もきっと同じ思いで見守っていてくださったと思います。
「故中川正文先生を偲ぶ会」ということで、たくさんの皆さんが集まり、美味しいお料理やお酒をいただきながら、子育てについて、大人の行動について、現代の社会について語り合う時間をいただきました。
「絵本講師・養成講座」を開講して12年目に入りました。並行して13期の準備も進めております。子どもを取り巻く環境は、開講時より更に酷いものになっています。青少年の事件も後を絶ちません。「絵本で子育て」センターを全国区にしてもっと活動の輪を広げなくてはいけないね、との先生の言葉が耳元で聞こえます。
そして次の言葉も……。「絵本の言葉は日本語の最後の砦」 「絵本を読むことで家庭に言葉を取り戻そう」 「妊娠したら絵本を読もう、近くの書店で本を買って」。先生の教えを胸の奥に刻んで頑張っていきます。
(もり・ゆりこ)
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