「絵本講師・養成講座」東京会場第4編リポート
54年ぶりの初雪から2日後の東京。
寒気も遠ざかった穏やかな天候の中、
折り返し地点となる第13期「絵本講師・養成講座」東京会場・第4編が2016年11月26日に開催されました。
午前の部は児童文学者で「絵本で子育て」センターの顧問であられた、故・中川正文先生のDVD講演の視聴。
元気な中川先生にお目にかかれる、嬉しい時間です。
今年も数々の問いかけの言葉が胸に響きます。「自分で考えているか?」「思いあがっていないか?」「偏っていないか?」「特効薬を求めていないか?」。1冊の本、絵本を仲立ちにして、人間が人間に大事な文化を手渡すということ、同じ経験を共有するということはどのようなことかというお話に、思わず背筋がシャンと伸びるのを感じます。
また、かつて中川先生が「上から目線で子どもたちに対して使用していた言葉遣いを反省された」という失敗のエピソードから「失敗もいい。そこから人間は進歩する、賢くなるんだよ」という言葉に励まされた受講生の皆さんも多かったのではないでしょうか?
午後の部は、今期から新たな講師としてご登壇くださった、詩人・アーサービナードさん。ニューヨーク州のコールゲート大学で英米文化を学ばれていたものの「日本語、面白そうっ」の一心で、卒業式の日にはなんと池袋にいた!(おばあちゃんに怒られたそうですが)というから驚きです。
まずは幼いころから大好きで何度も何度も読んでもらったという絵本、『ダンデライオン』(ドン・フリーマン/さく、アーサー・ビナード/やく、福音館書店)の読み聞かせから。
来日後、大好きなこの絵本をあちらこちらの図書館で探し求めた結果、出版されていない事実を知り、ご自身で福音館書店に翻訳を申し出て作品化されたときは「生きていて良かった!」と思えたそうです。
と同時に原作者がどのような問題と格闘し、その問題をこの絵本にちりばめていたのか、翻訳をしたからこそ見えたという気づきも軽妙にお話しくださいました。
TV、コマーシャル、雑誌、看板、など……私たちは情報の渦の中に身を置いています。だからこそ、思考を停止してしまわずに、自分なりに見極めることが重要だと、会場の中を後列まで移動されながら、時には受講生との会話のやり取りを楽しまれながらの充実したご講演でした。
その後のグループワークは、いよいよ絵本講座を組み立てるにあたり、どのように準備をしたら良いのか? という話題で真剣にディスカッションが進んでいました。(その迷いや不安は、次回第5編の養成講座できっと解消されるはずです)。
第4編も、まさに中川先生の言葉「親鸞の平座のごとく、同じものを志し、ともに成長する学びのひと時」な1日でした。
皆さま、どうぞよいお年を。来年またこの会場で元気にお目にかかりましょう。
(おおくぼ・ひろこ)
第13期 第4回 受講風景
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