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報告者
芦屋9期生
山田 智美
第4編   〜 絵本講座の組み立て方 〜
2013年10月26日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 第10期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)第4編が10月26日(土)、芦屋ラポルテホール特設会場にて開催されました。

午前中は、故・中川正文先生(作家・元大阪国際児童文学館特別顧問)の講演会のDVD(東京会場第7期)の上映でした。今回は上映する機器が新しいものに変わったとのことで、昨年のよりも映像も良く、音声も聴きやすくなっておりました。
講演会での中川先生のお声は、晩年の闘病のために決して大きくはありませんでしたが、そのお話からは先生の優しく穏やかなお人柄と、子どもたちへの愛情が感じられました。

大人と子どもは同じ目線(平座)であることが大切であり、絵本の読み聞かせにおいても、子どもに「与える」や「下ろす」という、子どもに対しての高慢で思い上がった考えは捨て、「読むチャンスを与えられた!」という気持ちで、子どもに「届ける」。
大人が読み手として一冊の絵本を楽しみ、子どもたちは受け手として、大人が楽しんだのと同じ絵本に感動する。一冊の絵本を仲立ちとして経験を分かち合い、更に共に「成長する」ことが大人と子どもとの基本的な関係である、と先生は話されました。

テレビは一方的に情報が流れてくる一度きりのものであるのに対し、本は何度も読み直すことができるものであり、何度読んでも飽きない、読み応えのある本を選ぶことで、一冊の本を繰り返し読み、長い付き合いができる。自分の本には「自分で買った」という喜びがあり、手を伸ばせばいつでも手に取ることができて長い付き合いができる。「『本を貸して』と言われたときに『いやだ』と言うかっこよさ」。先生のこのお言葉から、先生の本に対する深く熱い想いを感じ取ることができました。

最後に、先生の柔らかく穏やかなお声で、『すみれ島』(今西祐行/文、松永禎郎/絵、偕成社)を読んでくださいました。
先生のお声を聴きながら、目を閉じて絵本に描かれた情景を思い浮かべると、まぶたの奥から涙が溢れ出てきました。目を開け、会場を見渡すと、私と同じようにハンカチで涙を拭う受講生の姿が会場のあちこちに見られました。私たちは、大切な命のもとに成り立っているこの平和を忘れてはいけないのです。「命を大事にすること」を子どもたちにしっかり伝えていきたいと心から思いました。


午後は藤井勇市先生(「絵本講師・養成講座」専任講師)の講演でした。
「中川正文先生の講演と、第2編での むのたけじ先生の講演には通底するものがある」と先生は最初に話されました。 「平和」「戦争」「子育て」・・・・・・。
この日の朝日新聞・毎日新聞の朝刊の見出しは、10月25日の午前に閣議決定した「特定秘密保護法案」についてでありましたが、この法案によって、中川先生が講演で読んでくださった『すみれ島』の社会や、むのたけじ先生が講演で話された「戦争を殺すために私は生きている」という戦前・戦中の社会ができてしまうのではないか、と先生はおっしゃられておりました。
むの先生の著書『詞集たいまつT』(評論社)に書かれた「はじめにおわりがある。抵抗するなら最初に抵抗せよ。歓喜するなら最後に歓喜せよ。 途中で泣くな。途中で笑うな。」の一文が、今朝の「天声人語」でも引用されていたそうですが、私の心にもグサッと突き刺さるようでした。

先生は、故・中川正文先生との出会いや、「絵本講師・養成講座」のためにお力添えいただくことになった経緯、『きつねやぶのまんけはん』(中川正文/作、伊藤秀男/画、NPO法人「絵本で子育て」センター)を出版する際のエピソードをお話してくださいました。また、中川先生の処女作『青い林檎』(百華苑、昭和24年)についても紹介されながら、中川先生との温かい思い出について語ってくださいました。

次に、「三つの『ない社会』」で生きる子どもたちについてもお話ししてくださいました。大人と子どもの違いについてのお話。子どもは親の発言・行動を見、それを吸収しているという先生のお話を聞き、自分はまだまだ「大人」と胸を張れないのではないか、大人として子どもに吸収されて恥ずかしくないような発言・行動ができているのか……と考えさせられました。そして、先生は、子どもたちを取り巻く環境を考える上で切り離せない教育についてもお話されました。

厳しい競争格差社会の現代において、それを背景に「ビジネス」としての教育観が広まっており、より有利に生きるために教育の早期化が蔓延してきているが、妊娠後期〜5歳までの早期教育について、第一次のブーム時に大きな影響を与えたと言われる、故・井深大ソニー元社長も、後に「知的教育よりもまず人間性が大切」と反省されたそうです(1990年4月28日、朝日新聞夕刊)。
「知育教育よりも、まずは人間性」――
私はこの言葉をより多くの家庭に届けたいと思いました。そのためにも私たち絵本講師が、絵本をより多くの子どもや家庭に届けていかなければいけないのだと再認識いたしました。

 最後に8つのグループに分かれ、約1時間のグループワークが行われました。
それぞれのグループが講演内容の感想や次回の課題リポートの作成に向けた疑問や提案、質問、意見の交換をし合ったり、それぞれに持ち寄った絵本の紹介をされたりしておりました。今回で4回目ということもあり、各グループにそれぞれの「色」が出てきているように感じました。
私が受講生の時、このグループワークでの交流がとても楽しく、リポート作成の際にはとても参考になり、貴重で大切な時間でした。10期の受講生にとってもこのグループワークが大切な時間となっているのだと実感いたしました。(やまだ・ともみ)



★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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