バナー
報告者
芦屋7期生
原 知恵
開講式   〜 絵本について 〜
2011年4月23日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 春の雨が若い桜の葉を静かに濡らす 4月23日、芦屋市船戸町のラポルテホール3階特設会場において、第8期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)が開講となりました。
今年は70名の受講生と10名の特別聴講生(第7期生)が、新しいスタートへの期待と少しの緊張を胸に集いました。

 開講に先立ち、先の東日本大震災で未曾有の災害に遭われ犠牲になられた方々に哀悼の意を表して黙祷を捧げ、一日も早い復興をお祈りしました。
開講式では、まず主催者を代表して NPO法人「絵本で子育て」センター森ゆり子理事長のご挨拶がありました。本講座は、これまで全国に900名の絵本講師を輩出していること、さらに夢は「街を歩けば絵本講師にあたる」と言われるようになること、とお話しくださいました。
また、絵本で子育てすることの素敵さ、楽しさ、豊かさを知る人が増えることで、街が、社会が、日本が変わる、そんな力になると絵本講師への強い期待を述べられました。
そして、本講座で真剣に学びを重ねると、回を追う毎に皆若々しく美しくなっていくと前置きして、私達特別聴講生を紹介くださいました。
 少し照れくさかったですが、受講生の皆様に「1年後のご自身の姿」として映っていれば良いな、と思いました。
続いて、本講座を支援、協賛くださっているご来賓ならびに絵本講師の先輩から、ご祝辞をいただきました。
最初に、絵本講師の先輩、第5期生の内藤直子様より「共通の言葉、絵本。絵本でつながるご縁。学べば学ぶほど、もっと知りたくなる絵本の世界。1年後、絵本講師として共にはばたきましょう」と温かくて素敵なメッセージをいただきました。

 次に、「絵本講師の会」(はばたきの会)副会長の舛谷裕子様より、ご自身の絵本講座受講のきっかけについての話の後、この度の東日本大震災の被災地に絵本を10冊届けることができたエピソードを紹介くださいました。
「こういう時こそ、温かくて優しい言葉の詰まった絵本が必要です。」というメッセージに、絵本講師の果たす役割の大きさを実感しました。

 ママズケア主宰、南田理恵様からは「日々の活動で接する若いお母さん方に、絵本の力や、その必要性を伝える人、手段がまだまだ足りない」といった内容のお話がありました。
現代の子育て現場をよく知る立場からの言葉は、大変興味深いものでした。
最後に、こぐま社社長、吉井康文様よりお話をいただきました。
 吉井様も先の震災について触れられ、阪神淡路大震災の教訓が生かされ、震災後早い段階で子供達の「こころのケア」の運動として、ラジオで絵本を読もうという活動が始まっていることを紹介くださいました。
また、絵本出版の際には「何十年、何百年と長く読み継がれる絵本かどうか」ということを念頭に置き、よく吟味したものを出版するようにしているというお話がありました。さらに「絵本は楽しいものです。そして、まず私達大人が楽しまなければ、子ども達の心にその絵本は届きません」と教えてくださいました。

 開講式の後は、受講生が9つのグループに分かれ、初めてのグループワークを行いました。特別聴講生10名も各グループにオブザーバーとして加わり、これから1年間共に学んでいきます。まずは自己紹介、そして、リーダー、サブリーダーを決めました。
年齢も、職業も、生活環境も異なるメンバーですが、志を同じくするものが集まっているので、打ち解けあうのにたくさんの時間はかかりませんでした。

 グループごとに昼食をいただき、午後は、絵本作家であり、大阪国際児童文学館特別顧問の中川正文先生の記念講演「絵本・わたしの旅立ち」でスタートしました。
司会を務めてくださった「絵本で子育て」センター・事務局の加藤美帆様より、先生のご経歴紹介が始まると、先生はニコニコしながら立ち上がり深々とお辞儀をされました。
今年90歳になられる先生は、冒頭私達に向かって「皆さんの仲間内が話していると思って聞いてください」とおっしゃいました。
先生のような方から「同志」として迎えていただけたのかと思うと、それだけで胸がいっぱいになりました。
 会場の誰もが、先生の有難いお話を聞き漏らすことの無いようにと、身を乗り出すように耳を傾け、メモを取りながら聴き入りました。絵本は、親や教師が高みに立って子どもに「与える」ものではない。「親と子が共に経験を同じくするもの」、「一冊の絵本を仲立ちにし、同じ平面で、同じ感動を経験する。経験するだけでなく共に成長する」という大人と子どもと絵本の基本的な関係を強調されました。
だからこそ「大事な子どものための絵本は、自分でしっかり、本気で選ぶこと」とも念を押されました。
そして、「絵本は繰り返し読むことによって、本当の深い内容を知ることが出来るもの。図書館で借りるのではなく、自分専用の本を手元に置くことが大切である。こうして一冊の本が、我が家の本として深く長い関係をつくる」と教えてくださいました。さらに、良い絵本を選ぶ際のポイントを3つご紹介くださいました。
本当に、あっという間の90分でした。
先生も「話そうと思っていたことの3分の1も話せなかったよ」とユーモアたっぷりにおっしゃいながら、最後に、『すみれ島』(文・今西祐行 絵・松永禎郎 偕成社)を紹介くださいました。そこに絵本の実物はなく、ただ先生がお話だけを読んでくださったのですが、戦火の時代背景や、何も知らない子ども達の無邪気な表情、美しく可憐なすみれの花、先生の辛い顔、特攻部隊の青年の覚悟が鮮明に頭の中に映し出されました。「自らの命を捨てて戦った青年がいたことを忘れてはならない。同じ過ちを二度と繰り返してはいけない」そんな先生の心の奥底からの願いが込められた力強いお声は、遠い空に散って行った特攻兵の思いを代弁するようで、涙があふれて止まりませんでした。
会場中が、こんなに貴重で宝物のような読み語りの時間を過ごせたことへの感謝と、先生への敬愛の気持ちでいっぱいになりました。

 中川先生のご講演の後は、藤井勇市専任講師からのお話がありました。
冒頭、「この度の東日本大震災を境にして、人間は大きく変化をしなければならない」というお話がありました。『小さな物語の世界』(自分や自分の家族を中心にした考え方)から、『大きな物語の世界』(周囲の人のため、社会のためを思う考え方)へと変化をする時が来ていること、そして我々は知らない事が多すぎた、もう少し勉強をしておかなければならなかったと原発の問題について触れられ、この機会に学びを深めてみるよう提案くださいました。さらに、本講座の学び方、課題リポート作成時の注意点などの説明がありました。最後に、「学ぶ」とは何か、「知性や教養のある人」とはどんな人を指すのかという講話をくださり、受講生も改めて気持ちが引き締まっている様子でした。

 この後、またそれぞれのグループに分かれ、今日一日の講演内容の感想や、課題リポート作成に当たっての質問、さらに、これから1年間何を学びたいか等々話し合いました 終了後は、今朝初めて会ったもの同志とは思えないほど打ち解けあい、これから1年間共に学びを深める大切な「仲間」になっていました。

 私は今朝、受付で受講生の皆様をお迎えする係を務めていましたが、一日の終わりに皆様を見送った際は、朝の表情とは比べ物にならないほど活き活きと明るく輝いて見えました。たった一日で、既に多くの学びや気づきを得られ、そして、志を共にする仲間と出会うことができたからでしょう。
森理事長の冒頭のご挨拶にあったように、きっと8期生の皆様も1年後、ますます若々しく綺麗になっているだろうと確信しました。 (はら・ちえ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

第3期リポート はこちらから ★ 第4期リポート はこちらから ★ 第5期リポート はこちらから
第6期リポート はこちらから ★ 第7期リポート はこちらから ★ 第8期リポート はこちらから
 ★ 第9期リポート はこちらから ★ 第10期リポート ★ 第11期リポート はこちらから

絵本で子育てセンター