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報告者
東京7期生
田中 淳子
  第2編   〜読み聞かせについて〜
2011年7月23日(土) レインボービル
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 台風6号が過ぎ去った 7月23日。なでしこジャパンのW杯優勝という明るいニュースと共に、猛暑を忘れさせてくれるような涼しい日々が続いていたこの日、第8期「絵本講師 養成講座」(東京会場)第2編が飯田橋レインボーホールにて開催されました。

 講演前から多くの受講生の方々が、本日ご講演予定の絵本作家・とよたかずひこ氏の絵本を購入され、批評家・エッセイストの飫肥糺氏の著書を事前に目を通す方々の姿を拝見し、受講生の講師陣への関心の高さを伺う事ができました。

 午前の部は、飫肥糺氏が、「たましいをゆさぶる絵本の世界 子どもと絵本、そして『生きる』こと」をテーマにお話くださいました。

 東日本大震災によってもたらされた原発被害を人災(人が起こした事故)と例え、自然災害を避ける事はできないが、人災は太刀打ちできるんだということを写真絵本『おもいだしてください あの子どもたちを』( C・B・アルベス/ぶん、おび ただす/やく、ほるぷ出版)のご紹介と共にお話しくださいました。

 戦争によって日本は、広島・長崎と原爆被害を受けた唯一の国でもあります。また、地震や津波、原発被害も経験しているからこそ、その実相に寄り添い、未来を担う子ども達にも語り伝えなければいけないのだという事を考えさせられました。

 続けて、科学技術の進歩や原発に頼るのではなく、物には不便があってもいいのではと語りかけてくれる絵本として『にぐるまひいて』( D・ホール/ぶん、B・クーニー/え、もき かずこ/やく、ほるぷ出版)をご紹介してくださいました。古き良き時代のアメリカの牧歌的な絵本です。便利な道具は出てきません。春夏秋冬の営みを淡々と普通に、農作物や家畜の世話をしながら、自然と共存し、家族で助け合い生きている姿を描いています。ただそれだけの事ですが、今の世の中が忘れてしまった大切な何かを教えてくれるそんな絵本ではないかと感じました。

 また、自然全体で小さな命をとても大切にし、社会で一緒に育てていく事の大切さを教えてくれる絵本として、『ちびゴリラのちびちび』(ルース・ボーンスタイン/さく、いわた みみ/やく、ほるぷ出版)をご紹介してくださいました。

 ちびちびの成長を慈しみ、見守るたくさんの動物たちの姿には、ふっと温かな気持ちが込み上げてきます。昔のように隣近所が気軽に声を掛け合い、負担の大きな育児を助け合える地域が増えることを、私自身願わずにはいられない気持ちになりました。

 コミュニケーションの質に違いはあっても、大人と子どもが一緒に楽しむという『気持ちの面での繋がり』が絵本にはあるのだという飫肥氏のお言葉からも、絵本の持つ力と可能性を強く実感する事ができました。

 昼食を済ませ、午後からは絵本作家のとよたかずひこ氏のご講演です。「でんしゃにのってももんちゃんがやってくるー自作を語るー」をテーマに、自作の紙芝居と絵本の読み聞かせと共に、作品のエピソードやその想いをお話くださいました。

 まず始めに、紙芝居『でんしゃがくるよ』(童心社)の読んでくださり、実際読み聞かせの場では子ども達より早く会場に入り、子ども達を迎え入れ、お話の前に子ども達と触れ合うという、とよた氏のこだわりには、コミュニケーションを大切にされるお姿を垣間みる事ができました。

 『でんしゃにのって』(アリス館)の読み聞かせでは、このお話の元となった青森〜仙台間での駅弁販売のエピソードをお話くださり、会場全体が笑いに溢れ、とても和やかな雰囲気につつまれました。

 宮城県ご出身でもあるとよた氏。現在毎月のように被災地へ絵本の読み聞かせを精力的に活動されています。「呼ばれればいつでも赴いています」とお話くださったとよた氏の、被災した東北地方への復興に対する願いを感じる事ができました。続いて『バルボンさんのおでかけ』(アリス館)を読んでくださいました。主役のバルボンさんは33歳・独身・ O型という細かいキャラクター設定にも決して手を抜かない、とよた氏の絵本作りに対するこだわりを感じました。

 この絵本は現在『ワニのバルボン』シリーズとしてバルボンさんの日常や恋模様をユーモラスに描き、私自身もお気に入りの絵本の一つです。

 また最新作の紙芝居『はい、タッチ』(童心社)を、そして赤ちゃん絵本『どんどこももんちゃん』(童心社)を読んでくださいました。実際『どんどこももんちゃん』を中学生に読み聞かせた際の感想文の一部をご紹介して頂き、中学生の率直な疑問には受講生からも笑みがこぼれ、

 とよた氏の読者の感想を大切にし、真摯に受け止められるお姿には読者に対する敬意を感じました。読み手と聞き手が一緒に楽しめる=絵本の魅力の1つであることを、改めて教えていただいた貴重な時間となりました。

 グループワークの前に、藤井専任講師より第1編の課題リポートの講評や各質問に対する返答と共に、東日本大震災や原発の問題についてご提議がありました。 3.11以降、様々な情報が溢れ、混乱の日々が続いています。転換期を迎えた今だからこそ、メディアから流れる様々な情報を自身で取捨選択し、活用する事が求められていると感じました。

 その後、東京2期生の北素子さんが『いないいないばあ』(松谷みよ子/文、瀬川康男/絵、童心社)の読み聞かせを披露してくださいました。グループワークでは『いないいないばあ』の読み聞かせを課題に、グループ内で順番に実践したりと、普段とは異なる雰囲気に緊張しながらも、読んでもらう心地よさを感じながら、絵本や読み聞かせについて語り合ったりと活発な意見交換が行なわれていました。私自身も受講生の様々なお話からたくさんの刺激を頂き、年輪のように重なる学びの積み重ねに大きな喜びを感じました。

 次回、第3編は9月10日(土)です。新しい出会いと学びを楽しみに、皆さんにお会いできる日を心待ちにしています。(たなか・じゅんこ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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