第 6 期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)第 3 篇は、各地で起きた天災がまるで地球の悲鳴のようにも感じられたこの夏もいよいよ終盤にさしかかろうかという 8 月 22 日、芦屋ラポルテホール特設会場で開催されました。講座に少し慣れてこられたのでしょうか、受講生の方たちも、あちらこちらで挨拶を交わされる姿が見受けられました。 午前の講義は、作家であり、劇団「天童」を主宰されておられる浜島代志子先生の読み語りの実演でした。
先生は最初に 6 期生の方たちの名簿を見ながら、様ざまな場所、色々な職業の方の参加に感心しておられました。わたしは、絵本について学ぼうという意思を持ったこれだけ多くの仲間と、この会場で出会えたことの喜びを噛み締めていました。
浜島先生のお話は、明るい声と楽しい口調でテンポよく語られ、そのなかに笑いを交えながら「絵本の中には、世代を超えて子どもたちに伝えていかなければならない人間としての生き方、心の在り方などたいせつなことがたくさん描かれている」と話され、深く感銘しました。折しも衆院選を間近に控え、「日本を絵本で復興!」「国づくりは絵本から!」と話されましたが、わたしも「民話や良い絵本が伝わらなくては、国も終わり」ということには同感で、切実な思いを持っています。
絵本講師の使命は「子どもの成長にとって、いかに絵本がたいせつであるか。絵本を読むことで子どもの心と人格を良い方向へ向かわせる」ことができると信じて活動していくことです。そのようなわたしたちの活動に対して自信と力を与えてくださったお話でした。
また、現代の子どもたちは自己否定する子が多い(特に日本)、そのような子どもたちに自己肯定できるようになる絵本を読んであげてほしい。絵本は、例えて言うなら「心の食事」なので食材(絵本)選びもたいせつです。そして、料理と同じく愛情を持って、明るく楽しく笑顔で共に絵本を囲むことのたいせつさをお話くださいました。
『マウイ たいようを つかまえる』『タニファ』『はらっぱにライオンがいるよ ! 』などの読み語りは、対話型のパワー溢れる実演で受講生を魅了しました。
午後は片岡直樹氏(川崎医科大学名誉教授、 Kids21 子育て研究所所長)の「テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している!」でした。
他人とうまくコミュニケーションが取れない子どもたちが増えているが、それは先天的な要因ではなく、テレビやビデオの影響による後天的なものが多いのではないかということを、片岡先生は長年の臨床現場での経験から実例を示してお話くださいました。
「乳幼児期から電子音に囲まれた環境のなかでは、子どもの心が育っていかない。人間の心は、生まれてから繰り返される模倣、周囲による語りかけ、スキンシップなど、五感
を通しての体験の積み重ねで育つ。それには親の関わり方次第である」。現代社会では、難しいことも多いですが、親が、大人が、これらを意識して変えていかねばならないということを再認識しました。
また、先生の著書をはじめ、コミュニケーション障害や、テレビ、ビデオなどの悪影響に関する参考文献も多く紹介してくださり、今後の学習のなかで、ぜひ役立てていきたいと思いました。
次に藤井先生から、読み聞かせのボランティアをするにあたって、動機はどういったものであっても、目的を明確に持って、その目的を達成すべく、学び、努力し、質の高いボランティアをするべきだというお話がありました。また、小学校以上の読み聞かせは、教育の一環として捉えられがちだが、絵本の読み聞かせは、教育ではなく、子どもの心を解放することである、とお話くださいました。
最後のグループワークでは、浜島先生の対話型の読み語りについての感想や、絵本の持つ奥深い意味について、また現代社会のなかで、いかにテレビやゲームから離れた生活をするか、テレビ、ビデオなどに囲まれた子どもの暮らしがどんなに危険なものか、周囲に伝えていくのはどうしたらよいかなど、白熱した意見が飛び交いました。受講生の皆さんの熱意や意識の高まりが感じられました。
今夜は、『タニファ』や『マウイ』や『ライオン』と出会い、新しい世界を広げる子どもたちがたくさんいるのだなあ…と思うと嬉しくなりました。(さくら・みね) |