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報告者
福岡第3期
窪田 宇津美
〜  絵本講座の組み立て方  〜 第4回

2007年11月24日(土)
福岡朝日ビル

主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・ほるぷ出版・理論社
後援:西日本新聞社  特別協賛:ラボ教育センター

 まず最初に、これが、福岡会場の 11月24日の講座の客観的なまとめの報告にはならないであろうことをお断りしておきます。何故なら、“おおっ、こ、この方があの飯田栄彦さんなんだ”と出会えた喜びに興奮し、お話に胸がときめきっ放しだったので極端に主観的な報告になると思います。

 8年前、氏の御両親の介護をテーマにしたエッセイが西日本新聞に連載されました。アルツハイマー型認知症のお母さんとの日常、又、壮絶なお父さんの生き方に最後まで寄り添い看取られたことを書かれたのを、毎回胸を熱くして読んでいました。
  ありのままの現実を、自分の中に受け入れることの難しさを一つひとつのエピソードで語り、それでもかかわり続ける中で少しずつ受け入れられるようになったことを、嘘のない普段着のことばで書かれていました。全力投球で介護をし、いろんな人と関わりあい、それを書き、自分を曝し出し際限なく自己変革し続ける、すごい人だなあと思っていました。

 思ってた通りの人間らしさ溢れる氏の話は、「絵本フォーラム 53号」に御自身が書かれた「絵本がくれたダイヤモンド」というエッセイを基に進められました。そのエッセイの一語一句、行間を、資料を使いながら丁寧に読み深める、というスタイルの講義です。もしかしたら、『源氏物語』を読み解きながらみんなで読み進められる時もこのようにされるのかなと思いました。

 今回のお話の中で、私にとってクライマックスだったのは、思春期の息子さんの退学騒動不登校・休学に向き合った父親としての氏の体験でした。結果的には息子さんは半年間の休学の後、劇的に復学されたのですが、その間の親と子の対峙場面、家庭内でのかかわり、長期間の見守りの日々を赤裸々に話して下さいました。
  話の中で、臨床心理学者・河合隼雄氏の「思春期とはサナギの期間である。中身はドロドロ。サナギを割るな、目は離すな、手は出すな」「親子の対話には決死の覚悟が要る」「子が親を精神的に乗り越えようとする時、親は上手に殺されなければいけない」などの言葉を引用されました。
  私も、子育てで先が見えぬような辛い状況にあった時、河合氏の言葉を心の支えにして一生懸命一日一日を乗り越えたことがありました。
  この日は、何回も河合氏の言葉に触れることができ、今年七月にお亡くなりになった大好きな河合隼雄氏の追悼講演のようでもあり、いっぱい笑って、いっぱい泣いて、いっぱいエネルギーを頂いた幸せな時間でした。

 午後は梅田佳子氏の『がまんだ がまんだ うんちっち』の絵本の読み語りでスタート。
  そして、この本が出来上がるまでの家族の物語りを話してくださいました。
  それを伺って、作者紹介の欄に、夫妻の下にその時 10才の海緒君の名前が載っている謎が解けました。
  そして、その内情を知る身内的感覚で、この一冊にぐっと親近感を持ちました。
  「特別に親しみのある絵本」…うふふ、これってこの講座をうけている者の特権よね!と、ちょっと嬉しくなりました。

 続いて梅田俊作氏のお話。氏は、大人になった自分と子どもだった頃の自分が絶妙なバランスで同居している、類稀なる大人の一人だと思いました。
  子どもの視点から回りを見つめると、お金よりダイヤモンドより「大切なもの」は、案外身近にあるのではないか。
  例えばペシャンコに潰れたコーラの空き缶やダンプから落ちて目の前で真っ二つに割れた石でも、その時の想いを重ねると、たちまち世の中にたった一つの宝物になるということ。なるほど、です。
  午前中に飯田氏が「児童文学とは人間の不思議と人生の真実を、大人と子どもの複数の視座で見つめ直し、子どもにもわかるやさしい言葉で書いたもの」と迎言ったことがピタリと当てはまるような梅田御夫妻でした。

 最後は、絵本講師の松本直美氏による『くるくるさんぽ』の読み語りでした。小さな子どもが小さな指を、くるくると動かしながらくり返し楽しみそうな絵本です。
  これは梅田氏の小さなお孫さんに作られたのが基になっているそうです。かって、いわさきちひろさんの描く子どもの絵を見れば「ちひろさんの一人息子の猛くんは、今、このくらいの年齢だ」ということがわかると言われました。同じように、梅田夫妻の絵本を見ると、お孫さんは今、大体何歳くらいかがわかるかもしれません。

 素敵お話をたくさん聞いて、心が浄化され深い部分まで見易くなったのか、ふんわり解放されたのか、その後のグループ討議はどこも話が弾んでいました。

 三連休の真ん中の貴重な一日だったけど、ここに来てほんとに良かった♪という表情で、皆さん帰路につかれていたようです。

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