絵本体験記283 「子どもの成長と絵本」 坂枝 寿代(大阪府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第127号(2019年11.10)より

子どもの成長と絵本
坂枝 寿代(大阪府)

 子どもの成長に絵本は良い、不可欠だといわれています。どうしてでしょうか。
こう問われると困ってしまいます。なぜなら、絵本をたくさん読んでもらったケースと、全く読んでもらわなかったケース。 2通りの実験を一人の子どもにするのは不可能だからです。

 私のまわりにいる成長した子どもたちはどう育ったのか。彼らに絵本や本がどう関与したのか考えてみました。

 一人は30歳の女性です。彼女はいわゆるトップクラスの大学を卒業し、公の教育機関で働いています。公の職場ですが、最近よくいわれているブラック企業のような職場です。体がもっかと心配するほどの仕事ぶりです。話をしていると 「私、実家へ 帰ると必ず 『だるまちやんとかみなりちやん』 を手にとるの」とのこと。「 もう絵本は処分したと思っていたので意外でした。

 次は30歳前の青年です。彼は中学ー年で「いじめ」にあいました。先生やご両親の行動がはやく「いじめ」はすぐになくなりました。でも彼の登校拒否はしぱらく続きました。私は何も言わずにお母さんとは毎週連絡をとりました。 彼は週ー回の私のラポのクラスは休みませんでした。 登校拒否が終わった頃に「ぽ<登校拒否だったんやで。 気がつかなかった?」と尋ねられました。

 二人に共通している体験は物語の世界をたくさん旅していたことです。 彼らが人生の中で困った時、ふと立ち止まり幼い頃の自分に戻り元気になったり、苦難に耐え前向きに考えたりできていたのは絵本が大好きだったからではないでしょうか。これからも、子どもたちに物語を届けていきたいと思います。
(さかえだ・ひさよ)