連載 ジェリーの日本見聞録13 子どもと絵本の可能性

子どもと絵本の可能性

 子どもは可能性の塊。いろんな人と出会い、いろんなことを経験して、少しずつその子のかたちになつていきます。他の人のフリを見てまねしてみたり、相手に合わせて自分を変化させたり…… 。これって、子どものすごいところだと思いませんか。大人でしたら、ずーつとそのまま変化はしないことでも、子どもは変わっていくことが出来る。子どもの可能性に秘められたパワーを感じさせられます。

 子どもの可能性は最強レべルです。大人になると、この可能性はどこに消えるんでしょう。可能性はやつぱり大事です。一番大事かもしれない。 可能性がこんなに大事なものでしたら、大人の役割は子どもの可能性を育てること、守ってあげることなのではないでしょうか。出来るだけ消えてしまわないように。

 けれど、それはなかなか難しいことです。子どもが育っていく中で消えていってしまうものはたくさんありますが、増えていくものは少ないような気がします。可能性を育てる方法はいろいろあると思いますが、その中での私の一番のおすすめは、子どもが出来るだけ小さい頃からいろんな絵本を読み聞かせることです。

 「絵本を子どもに読み聞かせると、学校のテストの点数が上かる」と言う人がいます。この話が本当かどうかはわかりませんが、本好きの人はもしかしたら、本当にテストの点数が高いのかもしれません (私は違いましたが…… )。しかし、絵本の可能性を短い期問で図るのはもつたいない気がします。社会がドンドン便利になると短い期間のことぱかりが気になり、いつも短い期間で結果を求めてしまうように思います。現代人の悪い癖ですね。 たまには、長い期問で物事を見てみるのはどうでしょう。例えば、絵本を読むだけで普段私たちが経験出来ないことを、ファンタジーを介して経験することが出来ます。場所だけではなく、いろんな人と出会うことも出来ます。この経験は子どもにとってすごく大事なことだと思います。 今すぐ結果は出ませんが、 絵本で経験したことはきつと後で役に立つでしょう。

 私は、いろんなところでバイリンガル絵本講座をやつています。 子どもからたまに 「英語上手だね」 と言われます。多分、子どもは絵本を目にすると、私の国籍、職業や見た目など全部が関係なくなるのでしょう。 「絵本が好き!早く読んで!」という気持ちの方が強くなるのではないでしょうか。

子どもと絵本の可能性

 とよたかずひこ氏の 『バルボンさんのおしごと』 (アリス館)を読むと、主人公のバルボンさんは、ワ二なのにヒトと同じ心を持っている。そこにこの絵本の可能性をとても感じます。バルポンさんの世界では人間と動物がお互いに怖がることも無く、同じ世界で暮らしています。動物も人間も仕事をしていますし、コミュニケーションも出来ます。なんて平和で理想的な社会なのでしょう。

  「差別はだめ」、「見た目は違つてもいい」、「みんなの心は同じ」 などと子どもに教えるのはなかなか難しいことです。 人 (特に子ども)は無意識にメデイアやまわりの会話からいろんな言葉や意見を吸収して、パズルのように自分を作り上げます。子どもにバルポンさんの絵本を読んであげると、バルボンさんが理想とする社会の良いところを吸収出来ると思います。

 短期問では結果は出ませんが、小さい頃からたくさんの絵本を読んであげると、次の世代、また次の世代はきつと良い社会の方向へ変わつて行くと思います。これは長い期間の結果につながります。

 子どもの可能性を増やすチャンスを作るために、私は子どもたちに絵本を読み聞かせる活動をつづけています。


(ジェリー・マーティン)