児童発達支援事業所
枦山 佳子(はぜやま・よしこ)
当事業者では、感覚教育を取り入れ、子ども達が五感を育むことができる環境を整え、個別指導のもと様々な経験を積むことで、成功体験をたくさん増やせるように支援しています。中でも活動の終わりに行っている「絵本の読み聞かせ」の時間は、とても大切な役割を果たしています。子ども達にとっての読み聞かせの時間は、活動が終わりとなる見通しにもなります。 絵本の読み聞かせが始まる前に、椅子を並べる準備をします。子ども達の中には、準備を手伝ってくれる子、並んだ椅子に座っておすまし顔で待っている子、母親の膝に座って安心した表情で待っている子、わくわくした笑顔で待っている子、そわそわして椅子には座れない子、「絵本はいらない、聞きたくない」と言ってそっぽ向いてる子もいます。そんな中「絵本が始まるよ」と声をかけると、「車がいい」「飛行機じいさん」「かいじゅう」等々とリクエストしてくれる子もいて、選書に迷ってしまうこともありますが、同じ言葉で、繰り返し綴られている絵本や、動物がでてくる絵本には、興味を示してくれる子どもが多くいます。また、最後まで聞けない子も「絵本はいらない」って言っていた子も時折、ちらちらと絵本に目をやり、読み手が語る声や文脈にも反応して気にしている様子が見受けられる時もあります。 こちらに通所して1年になる幼児がいます。当初は、目も合わず、発語もほとんどなく、表情も乏し 子ども達に読み聞かせを毎日続けることで、絵本に興味を示し、絵本の文脈の中で、使える言葉が身につき、語彙力に繋がる子もいます。又、物語の中の主人公と同じ気持ちになって感情を表してくれる子、絵の細部まで見ていて、見つけたものを言葉にして伝えてくれる子もいます。日々、子ども達の成長ぶりに驚かされ、感動する瞬間が多々あります。そんな日々の中で感じることは、大人が子どもに「教えたいこと」の数より、子どもが「やりたいこと」の数の方が10倍多く、子どもの「やりたいこと」すべてに無駄がないことに驚かされています。たくさんの子どもと接して感じることは、子どもは一人として同じやり方はしない。だからこそ、その子どもにあった伝え方で、その子どもが納得するまで繰り返すことを大切にしたいと思います。子ども達が、やがて自ら学び、自ら考え、自ら行動できるようになる時まで。 絵本フォーラム129号(2020年03月10日)より |