絵本体験記292 絵本との出会い 蛯原 明美(茨城県)

わたしの絵本体験記
絵本との出会い
絵本との出会い
蛯原 明美(茨城県)

~絵本フォーラム第130号(2020年05.10)より

 

私と息子が初めて「絵本の読み聞かせ」に出会ったのは、図書館です。図書館では毎週、おはなし会が開かれていました。内容は、「わらべうた」と「絵本の読み聞かせ」でした。時間は30分間だけでしたが、息子と一緒におでかけができ、図書館で楽しい時間を過ごしたことを思い出します。

  その中でも一番記憶に残っているのは「わらべうた絵本」の『ととけっこう よがあけた』(こぐま社)です。耳に残るフレーズとメロディが忘れられません。私が、ふとした時に「ととけっこう よがあけた まめでっぽう おきてきな」と歌うと、9歳の息子も一緒に歌ってくれます。息子がこの「わらべうた」を初めて聞いたのは生後半年くらいのころです。それなのに今でも覚えていてくれたことが、とても嬉しく感動しました。

  息子と一緒に過ごした「幼少期の貴重な時間」を「絵本」を通して、今でも楽しい時間として共有することができ、とても幸せに感じています。素晴らしい「絵本」と出会えて本当に良かったと思います。

  子どもの成長はあっという間で、今では「絵本読んで!」と息子が言ってくることはありませんが、私から「絵本、読むから聞いて!」と親子で一緒に過ごす時間を楽しんでいます。息子に「絵本ってどんな力をもっていると思う?」と質問したところ、「子どもを成長させてくれる力」と答えてくれました。そんなふうに感じてくれていたんだと嬉しくて涙が出ました。

  いつまで絵本の読み聞かせができるかわかりませんが、親子のコミュニケーションの一つとして絵本を読みたいと思います。
(えびはら・あけみ)

絵本体験記291 心を繋いでいた絵本の記憶 平 沙有香 (千葉県)

わたしの絵本体験記
心を繋いでいた絵本の記憶
心を繋いでいた絵本の記憶 平 沙有香 (千葉県)

~絵本フォーラム第130号(2020年05.10)より

 

 私が初めて絵本を買ったのは、娘が3才の時です。保育園に頑張って通う娘へのご褒美でした。読書経験の無い私は、娘が喜ぶか心配になりながら文字の少ない可愛い絵本を選びました。「今日ね、面白い絵本を買ってみたの」、読みながら2人で夢中になって絵をたどり、いつの間にか驚きと笑いに包まれていました。その頃、我が家に父親の存在はありませんでした。母子だけの生活は寂しく不安でしたが、温かい絵本の時間は2人の楽しみになりました。

 その後、仕事が忙しくなり、娘との時間は減っていきました。娘は今年20歳になります。お勧めの本を聞くと、文庫本を渡されました。読み込まれたシワだらけの古い本。見覚えのある題名。「忘れちゃったの? 自分で買った本でしょ? 小学生の頃、ママを待ってる間、いつも読んでたんだよ」仕事を優先し、遅くまで娘を独りにさせていたあの頃。笑うことを忘れた私。泣いていた娘の記憶が蘇りました。大切に読み込まれたその本は、あの時の涙の理由を伝えているようでした。

 私の心が戻ってくるのを待っていた娘。娘と私の心を繋いでくれたのは、絵本の記憶でした。絵本は心を満たしてくれる、まさに魔法の本です。しつけや教育の為でもなく、効果を期待するものでもない。子どもの笑顔を生み、親子の心を繋いでくれる。

 最近また2人で本の話をするようになりました。時々話題が逸れ、時間を忘れて深夜まで話すことも。娘から改めて本の面白さを教わっています。
(たいら.さゆか)

絵本体験記290 私のかけがえのない時間 塩谷 裕子(兵庫県)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第130号(2020年05.10)より

 

かけがいのない時間
私のかけがえのない時間 塩谷 裕子(兵庫県)

 「本好きになってほしい。あわよくば、賢い子に」これが、私が絵本の読み聞かせを始めたきっかけでした。下心があり、今思うと恥ずかしいです。しかし読み聞かせを続けるうちに、当初の考えは重要ではないと自然に感じるようになりました。なぜなら私が考えていた読み聞かせによる効果以上のものを私は受け取っていたからです。それは「親子のかけがえのない時間」です。子どもと心通わすことができる幸せな時間です。『くっついた』(三浦太郎/さく、こぐま社)は長女と初めて心を通わすことができた絵本です。読み聞かせをしながら、私と娘が、そして娘を挟んで私も夫も娘と実際に頬をくっつけました。

 娘の頬の柔らかさやうれしそうな笑顔が、温かな感情とともに私の胸に刻まれています。娘が喜んでくれるので何回も読みました。この温かで幸せな時間こそが私の宝物です。私は自分の家の絵本棚を「かたばみ文庫」と名付けています。由来は長女の誕生日花が「かたばみ」だからです。

 そしてその花言葉は「喜び」「輝く心」「母の優しさ」なのです。まさしく絵本で子育てする私の想いだと思いました。かたばみ文庫には娘や息子との思い出のつまった絵本が並んでいます。そして「今日は何を読むかな」「どんな反応をするだろう」とわくわくしながら毎日読み聞かせをしています。絵本の読み聞かせは、今では私にとってなくてはならないものです。幸せな体験をさせてくれている子どもたちに感謝です。このかけがえのない時間を少しでも長く楽しみたいと思っています。
(しおたに・ゆうこ)

絵本体験記289 たからもの 大林 恵(大阪府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第129号(2020年03.10)より

 

たからもの
たからもの 大林 恵(大阪府)

 先日、娘が「私、気づいた。こないだ読んだ絵本に、本は子どもの宝物って書いてたやろ、それで私とがく(息子の名前)はお父さんお母さんの宝。ということは、本がいっぱいのうちの家は宝物だらけやん!?」

 高揚した顔で話す娘があまりにいとおしく、この日は私の頬もゆるみっぱなしでした。そんな娘は幼稚園の年長さん。人一倍感受性が強く繊細なところがあり、園生活では周りにも気を配るので時折ぷつんと糸が切れたかのように疲れるのです。

 そんな時、娘の心を柔らかく包み込んでくれるのが絵本です。選んで持ってくる絵本を通して娘の気持ちが透けて見えることもあります。先日もあまりに疲れて、お昼寝したいから読んでと持ってきたのが『ロバのシルベスターとまほうの小石』(評論社)でした。まほうにかかって石になってしまったシルベスター。必死に行方を捜す両親、もうだめなんじゃないかと思った矢先に奇跡が起こり……何度読んでも胸がいっぱいになるお話。娘にこの絵本のどこが好きなのか聞いてみると、「だって、もし私が行方不明になったらお父さんもお母さんも一生懸命捜してくれると思うねん。それを考えるとなんか幸せやし嬉しいから」ですって。

 こんなまっすぐな思いを伝えてくれて、お母さんも本当に嬉しいし幸せ。そして何より、ついつい感情をぶつけてしまう日もある中で、「私は愛されているんだ」という喜びがしっかりと娘の中にあることに気づけてホッと胸をなでおろしたのは言うまでもありません。絵本がもたらしてくれたこの喜び。これらが娘の心の中の「宝物」になってくれたらいいなと思いながら今日も絵本を読んでいます。
(おおばやし・めぐみ)

絵本体験記288 頼りがいのある相棒 福井 桃子(京都府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第129号(2020年03.10)より

 

頼りがいのある相棒
頼りがいのある相棒 福井 桃子

 私には現在、7歳、3歳、1歳の子どもがいます。3人も子どもがいると、肝っ玉母ちゃんのように思う方も多いのですが、実際は少し子育てに慣れただけのまだまだ初心者マークがついた母親です。そんな私なので、長女が生まれたばかりの頃は想像を絶する慌てふためきぶりでした。子どもとどう接していいか分からない私に絵本の読み聞かせを勧めてくれたのは夫でした。毎日オロオロするばかりで困り果てていた私はすぐに飛びつきました。私自身が好きな絵本を娘が夜眠る前にひたすら読み続けました。

  そんな母親初心者と共に育った娘はもう小学校一年生。小さかった頃の面影をわずかばかり残し、身体に不似合いなランドセルを背負って毎朝小学校に向かいます。きっとあと数年もすると、たいして大きくない私の身長をさっさと抜かして、ランドセルを小さく感じるようになるでしょう。

  あの頃、ページがすり減る程長女に読んだ『ぐりとぐらのかいすいよく』(福音館書店)。この絵本をひらく度、目をキラキラさせながら聞き、夜お布団の上でぐりとぐらの真似をして、くじらおよぎやイルカジャンプをしていた娘を思い出します。オロオロ母ちゃんの私はいろんなことをすぐ忘れてしまいます。こんなに忘れたくないと切望している今の子ども達の姿さえも。そんな私に代わって、絵本が子ども達の様子を覚えてくれている、そんな風に思えて仕方ありません。この先もずっとオロオロ母ちゃんであろう私は絵本という頼りがいのある相棒と共に子どもの成長を見守っていくのだと思います。
(ふくい・ももこ)

絵本体験記287 子どもと共に楽しむ絵本 幸崎 千恵(埼玉県)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第129号(2020年03.10)より

 

子どもと共に楽しむ絵本
子どもと共に楽しむ絵本 幸崎 千恵(埼玉県)

 私は娘が生まれたことをきっかけに、絵本を読むようになりました。私も夫も読書が好きでしたので、娘にも本を読む楽しさを知ってもらえたらいいなと思い、0歳から絵本の読み聞かせをスタートし、4歳になる現在も毎日絵本を読んでいます。

 娘のためにと読み始めた絵本ですが、子どもが興味を持つように工夫の凝らされた絵本の数々に、私自身が魅了されました。私が特に好きなのは、かこさとし先生の『からすのパンやさん』(偕成社)です。こんがりと美味しそうに描かれたパンを見ると、ワクワクした気分になります。娘への読み聞かせも何度もしていて、娘は見開きでたくさんのパンが描かれたページがお気に入りです。このページを開くと色々な形のパンを「これは何?」と興味をもって尋ねてきます。そして、「私はうさぎパンが好き」と自分のお気に入りのパンを選び始めます。私も好きなパンを選び、親子でパンの絵を見て「美味しそうだね」と言いながらうっとりと眺めています。

 絵本の読み聞かせは感動を一緒に体験できるとても大切な時間であり、親子で絵本の世界に入り込めるので、自然とコミュニケーションを取ることができます。

 子どもの成長はあっという間なので、何歳まで娘との読み聞かせの時間が持てるかなと今から少し寂しさがありますが、親子で一緒に過ごせるこの時間を楽しみながら、これからも絵本の読み聞かせを続けていきたいです。
(はやし・まき)

絵本体験記286 絵本で子どもと一緒に楽しい時間を 林 真紀(東京都)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第128号(2020年01.10)より

 

絵本で子どもと一緒に楽しい時間を
絵本で子どもと一緒に楽しい時間を
林 真紀(東京都)

 私は娘が生まれたことをきっかけに、絵本を読むようになりました。私も夫も読書が好きでしたので、娘にも本を読む楽しさを知ってもらえたらいいなと思い、0歳から絵本の読み聞かせをスタートし、4歳になる現在も毎日絵本を読んでいます。

 娘のためにと読み始めた絵本ですが、子どもが興味を持つように工夫の凝らされた絵本の数々に、私自身が魅了されました。私が特に好きなのは、かこさとし先生の『からすのパンやさん』(偕成社)です。こんがりと美味しそうに描かれたパンを見ると、ワクワクした気分になります。娘への読み聞かせも何度もしていて、娘は見開きでたくさんのパンが描かれたページがお気に入りです。このページを開くと色々な形のパンを「これは何?」と興味をもって尋ねてきます。そして、「私はうさぎパンが好き」と自分のお気に入りのパンを選び始めます。私も好きなパンを選び、親子でパンの絵を見て「美味しそうだね」と言いながらうっとりと眺めています。

 絵本の読み聞かせは感動を一緒に体験できるとても大切な時間であり、親子で絵本の世界に入り込めるので、自然とコミュニケーションを取ることができます。

 子どもの成長はあっという間なので、何歳まで娘との読み聞かせの時間が持てるかなと今から少し寂しさがありますが、親子で一緒に過ごせるこの時間を楽しみながら、これからも絵本の読み聞かせを続けていきたいです。
(はやし・まき)

絵本体験記285 息子と絵本とおとうちゃん 南部 佳代 (兵庫県)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第128号(2020年01.10)より

息子と絵本とおとうちゃん
息子と絵本とおとうちゃん
南部 佳代 (兵庫県)

 4歳の長男は、ダンゴムシに夢中だ。ダンゴムシが載った絵本をそっと本棚に仕込んでおいた。ダンゴムシを見つけると、「あっ、ダンゴちゃん!」と言いながら、その絵本を満面の笑みで持ってくる。ほうら、きたきた、思った通りだ。

 子どもの反応を想像しながら絵本を探すのは楽しいもの。思った反応と違うのもまた興味深い。慌ただしい1日を終え、ほっとするのが毎夜の絵本時間。好きな絵本を読み終えて、満足気に寝ころび、おしゃべりを楽しみ、いつのまにか寝入る姿をみていると、彼らも絵本時間を楽しんでいる様子だ。

 そして、休日の絵本時間にいい役割を果たすのが父親。先日、絵本の勉強会があり留守を父親に任せた日のこと。私が『ゴリラのおとうちゃん』(三浦太郎/作、こぐま社)を買って帰ると、長男は「ママがゴリラの絵本持って帰ってきたで~」と、丸1日子守をしてヘトヘトの父親に持っていった。《ええてんきやなあ》《なあ おとうちゃん あそんで~や》、大阪出身の夫は関西弁の絵本に「おっ」と思ったようで、イントネーションも大げさに、気合が入る。ゴリラの親子が、《おとうちゃんすべりだい》《おとうちゃんひこうき》……とやっていくうちに夫はだんだん苦笑いになる。読み終えたら、絵本の内容と同じことをやりたくなるのが子どもたちだ。

 《ブンブンブーン“おとうちゃんバイク”》、最後は絵本そっちのけではあるが、「なあ もっかいしてー」がとまらない。絵本1冊でずいぶんといい時間が過ごせるものだ。
(なんぶ・かよ)

絵本体験記283 「子どもの成長と絵本」 坂枝 寿代(大阪府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第127号(2019年11.10)より

子どもの成長と絵本
坂枝 寿代(大阪府)

 子どもの成長に絵本は良い、不可欠だといわれています。どうしてでしょうか。
こう問われると困ってしまいます。なぜなら、絵本をたくさん読んでもらったケースと、全く読んでもらわなかったケース。 2通りの実験を一人の子どもにするのは不可能だからです。

 私のまわりにいる成長した子どもたちはどう育ったのか。彼らに絵本や本がどう関与したのか考えてみました。

 一人は30歳の女性です。彼女はいわゆるトップクラスの大学を卒業し、公の教育機関で働いています。公の職場ですが、最近よくいわれているブラック企業のような職場です。体がもっかと心配するほどの仕事ぶりです。話をしていると 「私、実家へ 帰ると必ず 『だるまちやんとかみなりちやん』 を手にとるの」とのこと。「 もう絵本は処分したと思っていたので意外でした。

 次は30歳前の青年です。彼は中学ー年で「いじめ」にあいました。先生やご両親の行動がはやく「いじめ」はすぐになくなりました。でも彼の登校拒否はしぱらく続きました。私は何も言わずにお母さんとは毎週連絡をとりました。 彼は週ー回の私のラポのクラスは休みませんでした。 登校拒否が終わった頃に「ぽ<登校拒否だったんやで。 気がつかなかった?」と尋ねられました。

 二人に共通している体験は物語の世界をたくさん旅していたことです。 彼らが人生の中で困った時、ふと立ち止まり幼い頃の自分に戻り元気になったり、苦難に耐え前向きに考えたりできていたのは絵本が大好きだったからではないでしょうか。これからも、子どもたちに物語を届けていきたいと思います。
(さかえだ・ひさよ)

絵本体験記282 「親と子の心のつながり」 田中 倫子(東京都)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第127号(2019年11.10)より

親と子の心のつながり
田中 倫子

 無事に出産を終え退院した日。初めての育児に不安いっぱいだった私に、母が絵
本をプレゼントしてくれました。『いない いない ばあ』(童心社)、これが息子と読 んだ最初の絵本です。これをきっかけに、少しずつ色々な絵本を読むようになりまし
た。そしてある時、ふと幼い頃に母に絵本を読んでもらった記憶が蘇ってきたのです。 それは私にとって、改めて母の愛情を感じた瞬問でもありました。子どもと一緒に絵本を読むというのは決して片手間ではできません。子どもと1対1で向き合う時問が必要です。 だからこそ母と過ごしたその記億に心があたたまり、母の愛情を感じながら息子と絵本を読む時問は、とても心地良く幸せです。

 息子ももうすぐ3歳。 最初はなんとなく始めた読み聞かせも今では日常となり、今日はどの絵本を一緒に読もうかなと考えるのも毎日の楽しみです。 絵本を開くと、そこには息子との思い出がたくさん詰まっています。息子の言葉がまだ出なかったころ、台所にいた私のところにりんごの絵が描かれた絵本を持ってきて、その絵を指差し一生縣命何かを訴えてくるのです。りんごを息子に差し出したときの満面の笑みと美味しそうに食べる姿は、今でも忘れられません。今では登場人物になりきることもあり、絵本を通して息子の成長を感じるようになりました。 いつかひとりで本を読む日が来ると思いますが、この かけがえのない時問をできる限り長く積み重ねていきたいと思います。

(たなか・みちこ)