絵本体験記288 頼りがいのある相棒 福井 桃子(京都府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第129号(2020年03.10)より

 

頼りがいのある相棒
頼りがいのある相棒 福井 桃子

 私には現在、7歳、3歳、1歳の子どもがいます。3人も子どもがいると、肝っ玉母ちゃんのように思う方も多いのですが、実際は少し子育てに慣れただけのまだまだ初心者マークがついた母親です。そんな私なので、長女が生まれたばかりの頃は想像を絶する慌てふためきぶりでした。子どもとどう接していいか分からない私に絵本の読み聞かせを勧めてくれたのは夫でした。毎日オロオロするばかりで困り果てていた私はすぐに飛びつきました。私自身が好きな絵本を娘が夜眠る前にひたすら読み続けました。

  そんな母親初心者と共に育った娘はもう小学校一年生。小さかった頃の面影をわずかばかり残し、身体に不似合いなランドセルを背負って毎朝小学校に向かいます。きっとあと数年もすると、たいして大きくない私の身長をさっさと抜かして、ランドセルを小さく感じるようになるでしょう。

  あの頃、ページがすり減る程長女に読んだ『ぐりとぐらのかいすいよく』(福音館書店)。この絵本をひらく度、目をキラキラさせながら聞き、夜お布団の上でぐりとぐらの真似をして、くじらおよぎやイルカジャンプをしていた娘を思い出します。オロオロ母ちゃんの私はいろんなことをすぐ忘れてしまいます。こんなに忘れたくないと切望している今の子ども達の姿さえも。そんな私に代わって、絵本が子ども達の様子を覚えてくれている、そんな風に思えて仕方ありません。この先もずっとオロオロ母ちゃんであろう私は絵本という頼りがいのある相棒と共に子どもの成長を見守っていくのだと思います。
(ふくい・ももこ)