子育ての現場から 8 大人の関わり方次第で子どもの可能性はどんどん伸びる

松岡 素万子

まつおか・すまこ 私は、公益財団法人ラボ国際交流センターのボランティアリーダー、ラボ教育センターのテューターとして32年の歳月を多くの子どもたちと過ごしてきました。0歳から大学生までの集団の中で、子どもたちは自分の意見を主張し、また、他の意見にも耳を傾け、お互いを認め合う場を作ってきました。0歳から大学生になるまで通っているお子さんは、まるで自分の子どものようです。    

  基本的にはラボが所有する200を超える物語の中から子どもたちが納得して選んだものを、主に英語と日本語で身体だけを使ってみんなで劇のように作り上げる活動が軸になっています。私たちが「テーマ活動」と呼んでいるそれは、説明するのはとても難しい活動ですが、子どもの成長に欠かせないあらゆる要素が入っています。物語に対するみんなの思いや感性が年齢に関係なく混じりあい、一回きりの発表に向かって物語を作り上げていきます。そんな活動を通して子どもたちを見ていると実に様々なことが見えてきます。どんな小さな子にも自分の思いがあり、それをしっかりキャッチしてあげることがどれほど大切か思い知らされます。

  幼児の頃、必ず『三びきのやぎのがらがらどん』を楽しみます。自分の好きな登場人物になって遊びますが、その時、トロルが怖くてママのお膝に座って動かない子がいます。何度かやるうちに、ママのお膝を離れて小さいやぎになります。怖いので、トロルが出てくる前に足早に橋を渡ってしまいます。子どもによって時間の差はありますが、無理強いしないで待っていると、意を決して「大きなやぎになろう!」と思う時期が来ます。その間、小さな胸でいろいろ考え、ついに勇気を出して「トロルをやっつけてやるぞ!」と挑戦するのです。トロルに扮した私に飛びかかってくる時の決意を秘めた目は、引き込まれるほどの強い力があります。本気なのです。トロルを倒して意気揚々と橋を渡る姿は、大きな仕事を成し得た達成感と自信に満ち溢れています。こうして大きな困難を自分の力で乗り越えたという経験がその子を大きく成長させます。そんな時、私はその子をうんと褒めます。そして一緒に喜びます。その時の笑顔は最高です。そんな現場を私は子どもたちと過ごし、子どもの無限の可能性と絵本の持つ大きな力を日々見せてもらっています。

まつおか・すまこ

  32年も活動を続けていると、子どもを持つ修了生も多くいます。最近は、赤ちゃんが出来たと知ると、「心豊かな子に育てる方法があるよ」と毎日の絵本の読み聞かせの話をします。最初、「な~んだそんなことか」と反応は悪いですが、丁寧にその必要性を語ると目を輝かせて「もっと教えて欲しい!」と言ってくれます。家庭でおかあさんやお家の人が肉声で毎日、絵本の読み聞かせをする事で、子どもの心を育て、絵本の豊かな世界を共有することができ、おかあさんのぬくもりや優しい声が身体に蓄積されます。それが大きくなって困難にぶつかった時、どれほど励みになり大きな力になるか計り知れません。たくさんの絵本を通して養った豊かな感性とお母さんやお家の人の愛情をいっぱい受けたお子さんが増えれば、無用な争いも少なくなるのではないでしょうか。    

 私は、ラボ活動は世界平和に繋がる活動であると思って長年続けてきましたが、絵本の読み聞かせも同じだと思います。これからも多くの人に絵本の読み聞かせの大切さを広げていきたいと思っています。
(まつおか・すまこ)