土居安子のおすすめ絵本 第130号『やさいのおにたいじ』他

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「絵本フォーラム」第130号
(2020.05.10)より

となりのショセットさん

となりのショセットさん
ロイク・クレマン/文
アンヌ・モンテル/絵
石津ちひろ/やく
評論社

 「ぼく」がとなりのショセットさん(靴下の意味、本当はショゼットさん)というおばあさんと知り合う過程を描いた絵本。一人暮らしのショセットさんは、飼い犬のダゴベールと毎日同じ時間に同じ場所を散歩します。ところが、ある日、ぼくはショセットさんが一人で町にいて、いつも通っていた公園の立て札や肉屋の値札をこっそり盗んでいるのを見てしまいました。ペンと水彩を使った絵から個性的なショセットさんと町の様子とそれを見ているぼくの気持ちが読み取れます。

 


(税込価格1,650円

やさいのおにたいじ

『やさいのおにたいじ』
つるたようこ/さく 
福音館書店

  副題に「御伽草子「酒呑童子」」とあるように、野菜を登場人物にした「酒呑童子」の物語。こんにゃくいもの鬼がひのな姫を誘拐し、たけのこ、松茸、加茂茄子、堀川牛蒡などの京野菜が助けに行きます。野菜たちは知恵を使ってこんにゃくいもの屋敷に入り、たけのこが不思議なお酒を飲ませて姫を助け出します。野菜たちの擬人化が楽しく、こんにゃくいもの酔っ払った姿がユーモラスに描かれています。

(税込価格990円)

ぼくはひとりぼっちじゃない

ぼくはひとりぼっちじゃない
つかさおさむ/さく・え 
理論社

 ツナミにおそわれて、一本だけ残った「わらう木」は、たおれそう。そこで、ツナミのときに木に守ってもらったねこのポポとおもちゃのロボくんは、「ヨイコラ ドッコイ ドッコイ コラサ」と、木を押しました。それからポポたちは、木のためにいいものを探しに行って、迷子になって、細い木と、縄と友だちを連れて帰ってきます。繊細な線で描かれた黄色いわらう木がみんなと一緒に立っている絵からは音楽が聞こえてくるように感じます。


(税込価格2,200円

土居安子のおすすめ絵本 第129号『チンチラカと大男』他

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「絵本フォーラム」第129号
(2020.03.10)より

「へてかへねかめ」おふろでね

『おまつりをたのしんだおつきさま
メキシコのおはなし』

マシュー・ゴラブ/文
レオビヒルド・マルティネス/絵
さくまゆみこ/訳
のら書店

 星たちが「たのしい あそびも おまつりも、みんな おひさまの もとでしか みられない」から「おひさまの そらに ひっこししたいな。」と言っているのを聞いたおつきさまは、夜にお祭りをすることにしました。紙のランタンやたくさんの食べ物を用意して、みんな歌ったり踊ったりしてお祭りを楽しみました。メキシコ・オアハカ地方に伝わる物語。民族性豊かな絵が自然とともに生きる人々の暮らしをあたたかく描いています。


(税込価格1,760円

チンチラカと大男

『チンチラカと大男』
片山ふえ/文 スズキコージ/絵
BL出版

 3人兄弟の末っ子のチンチラカは、王様に魔の山に住む大男から黄金のつぼを取ってくるように言われます。チンチラカはドリルとシャベルをもらって知恵を使って王様のためにつぼを手に入れます。すると、王様は今度は魔法の楽器のパンデゥリを手に入れるように命じます。山に囲まれた国ジョージアの昔話。大胆な構図でチンチラカの活躍をいきいきと描いた絵が魅力的です。

(税込価格1,760円)

コレットのにげたインコ

目で見てかんじて
世界がみえてくる絵本

ロマナ・ロマニーシン/著
アンドリー・レシヴ/著
広松由希子/訳
河出書房新社

  黒い帽子に白フクロウが乗った蛍光ピンクの表紙を開くと、青い見返しの左に閉じた人間の両目があり、右には開いた両目が描かれています。この本は、「見るとは?」「色とは?」「イメージとは?」などの科学的な事象が洗練されたデザインと詩的な文章でユーモラスかつ哲学的に紹介されています。目が見えない人にとっての「見る」とはどういうことかも書かれており、画面の美しさは見ることの楽しさを実感させてくれます。


(税込価格2,200円

土居安子のおすすめ絵本 第128号『たいこ』他

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「絵本フォーラム」第128号
(2020.01.10)より

「へてかへねかめ」おふろでね

『「へてかへねかめ」おふろでね』
宮川ひろ/作 ましませつこ/絵
童心社

 そうたは、大好物のくりおこわを食べてから、じいちゃんとお風呂に入ります。じいちゃんはそうたの頭を洗ってくれて、いっぱい遊ばせてくれます。そして、「そろそろ あったまろう」と言います。すると、そうたは「へてか へねかめ かめかめ かめか・・・」という不思議な呪文を3回唱えます。呪文を唱えているときの絵が空想豊かで、一日たっぷり遊んだそうたが、お風呂であたたまった満足感が伝わってきます。


(税込価格1,430円

たいこ

『たいこ』
樋勝朋巳/ぶん・え 福音館書店

イヌがたいこをたたいています。すると、子どもとカエルとライオンが順番に「なかまにいれて」とやってきました。たいこの音は「トントン ポコポコ ペタペタ ボンボン」とにぎやかになりました。すると、そこへワニがやってきて、「うるさいぞー」とみんなを追い払い、一人でたいこをたたきはじめます。追い払われたみんなはそうっと仲間に入りました。みんなでたいこをたたいて心がはずんでいく様子が絵から感じられます。

(税込価格990円

コレットのにげたインコ

コレットのにげたインコ
イザベル・アルスノー/作
ふしみみさを/訳 偕成社

 コレットは引っ越してきたばかり。外へ出ると近所に住む兄弟に出会います。コレットは思わず、「ペットが いなくなっちゃって さがしてるの」と言います。すると、その兄弟は、ペットを一緒に捜してくれると言い、友だちのリリイに望遠鏡を借りに行こうと誘います。こうして、近所にインコの捜索隊ができあがり、コレットのウソはどんどん大きくなります。絵がコレットの気持ちとコレットの語るウソの魅力を描いています。


(税込価格1,540円

土居安子のおすすめ絵本 第127号『チリとチリリ あめのひのおはなし』他

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「絵本フォーラム」第127号
(2019.11.10)より

力ルメラのねがい

マッ卜・デ・ラ・ぺ一二ャ/作
クリスチャン・ロビンソン/絵
石津ちひろ/訳
鈴木出版

 今日はカルメラの誕生日。初めておにいちゃんと外出できるので大喜ぴ。プレゼントにもらったブレスレットを鳴らしながら、コインランドリーへ。 それから、願い事をしようと綿毛のついたたんぽぽを持って、おにいちゃんが友だちの家から出てくるのを待ちました。おにいちゃんは、妹をめんどうだと思っていますが、カルメラが転んで綿毛を飛ぱしてしまった時、すてきなプレゼントをします。落ち着いた色彩のコラージュ画が魅力的。


(税込価格1,650円

チリとチリリ あめのひのおはなし

どいかや/作 アリス館

くもり空のある日、チリとチリリが自転車で出かけると、雨が降ってきました。二人は「カフェあまやどり」でひとやすみ。お茶を飲んでレインコートを買うと、また自転車で進みました。しぱらくすると、急に体が軽くなって、二人は雨が下から降る「さかさあめ」の上にいました。雨の流れる様子が水色の色鉛筆で描かれた柔らかな線で表現されていて、不思議で美しい世界が広がっています。

(税込価格1,320円

かみなのに

たにうちつねお/さく
大日本図害

 一枚の白い紙の写真と「かみなのに はねる」 ということぱ。バッタの「やってみて」 ということばに、紙を丸めて折って指で押さえて離すとまるでバッタのようにぴょんと飛ぴます。このように紙を切ったり、破ったり、折ったり、丸めたりして、紙の性質を伝える仕掛け絵本。紙は、「 はねる」「のぴる」「こわい」「ちからもち」「かたい」 と動物や虫によって紹介されています。細工が簡単なので、自分でも試したくなります。

 


(税込価格1,430円

土居安子のおすすめ絵本 第126号『うみのあじ』他

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「絵本フォーラム」第126号
(2019.09.10)より

『ヒキガエルがいく』パク ジォンチェ/作

申明浩/訳 広松由希子/訳 岩波書店

 草原の中から「トン」という音とともに、1匹のヒキガエルが出てきました。「ト トン」と前に進むと、「ドンドン ダンダン」と後ろからたくさんのヒキガエルが続きます。ヒキガエルたちはビルの間をこえたり、金網をよじのぼったりして、月の中を池まで歩き続け、そこで、つがいになり、卵を産みます。韓国の太鼓の音と写実的なカエルの姿を通して「生きる」ことの意味が象徴的に描かれています。


(税込価格1,944円

『うみのあじ』

たけがみたえ/作 あかね書房

犬のべらは、なつことお父さんとはじめて海へ行きました。なつこたちが海に入っている間、べらはお弁当の匂いをかぎながら、荷物を見張っています。しばらくしてのどがかわいて海の水を飲んで大失敗。それから海の中をのぞいて、タコと目が合います。好奇心旺盛な「べら」の視点から海となつこたちの様子がいきいきと描かれています。

(税込価格1,512円

『しょうぎはじめました』

尾﨑たまき/写真・文
新日本出版社

 学童保育で将棋を覚えた「ぼく」は、夏休みにじいちゃんに将棋を教えてもらうことにして、じいちゃんの家に遊びに行きます。じいちゃんは、丁寧に将棋のルールを教えてくれました。パパがやってきて対戦しますが、ぼくは負けてしまいます。けれど、帰る直前、じいちゃんと対戦して勝つことができます。家族三世代で遊ぶ楽しさが絵から読み取れると同時に、将棋の基本的なルールを学ぶことができます。

 


(税込価格1,512円

土居安子のおすすめ絵本 第125号『マチルダとふたりのパパ』他

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「絵本フォーラム」第125号
(2019.07.10)より

夜のあいだに

『夜のあいだに』
テリー・ファン&エリック・ファン/作
原田勝/訳 ゴブリン書房

 グリムロック通りの「こどもの家」の前でウィリアムがフクロウの絵を描いていると、植木職人のおじいさんが通り過ぎました。次の日の朝、「こどもの家」の前の木は、フクロウの形に刈り込まれていました。それから毎晩、通りにはネコ、ウサギ、ドラゴンなどのトピアリーが増えていき、人が集まってきます。公園がトピアリーでいっぱいになった後、おじいさんは去り、ウィリアムにハサミが残されます。繊細な線で描かれたトピアリーが美しく、芸術が人々の心を結びつけるというメッセージが読み取れます。


(税込価格1,836円

 

 

 

マチルダとふたりのパパ

『マチルダとふたりのパパ』 
メル・エリオット/作 三辺律子/訳
岩崎書店

  パールの学校にマチルダという転校生が来ました。二人はかけっこも木のぼりも泥遊びも好きで、すぐに仲良くなりました。パールはマチルダにはパパが二人いることを知り、「おとうさんが ふたりなら、たのしさも 2ばい」かもと思いながらマチルダの家に遊びに行きます。活発で好奇心に満ちたパールを明るい色とデザイン性に優れた絵で表現し、ゲイカップルの家族に出会うパールの様子を自然に描いています。


(税込価格1,620円

 

フシギなさかな ヒメタツのひみつ

フシギなさかな ヒメタツのひみつ
尾﨑たまき/写真・文
新日本出版社

 タツノオトシゴの仲間「ヒメタツ」を紹介した写真絵本。ヒメタツは、体の色を周囲の色に変化させることができ(擬態)、尾を手のように使うことができます。そして、オスは、メスの卵をお腹の袋(育児のう)に入れて、孵化するまで育て続けます。水俣の海で撮影された写真は、ヒメタツの赤ちゃんが生まれる瞬間など思わず見入ってしまいます。文は読者に語りかけるようで、わかりやすく、生き物の不思議を感じることができます。


(税込価格1,620円