絵本体験記289 たからもの 大林 恵(大阪府)

わたしの絵本体験記

~絵本フォーラム第129号(2020年03.10)より

 

たからもの
たからもの 大林 恵(大阪府)

 先日、娘が「私、気づいた。こないだ読んだ絵本に、本は子どもの宝物って書いてたやろ、それで私とがく(息子の名前)はお父さんお母さんの宝。ということは、本がいっぱいのうちの家は宝物だらけやん!?」

 高揚した顔で話す娘があまりにいとおしく、この日は私の頬もゆるみっぱなしでした。そんな娘は幼稚園の年長さん。人一倍感受性が強く繊細なところがあり、園生活では周りにも気を配るので時折ぷつんと糸が切れたかのように疲れるのです。

 そんな時、娘の心を柔らかく包み込んでくれるのが絵本です。選んで持ってくる絵本を通して娘の気持ちが透けて見えることもあります。先日もあまりに疲れて、お昼寝したいから読んでと持ってきたのが『ロバのシルベスターとまほうの小石』(評論社)でした。まほうにかかって石になってしまったシルベスター。必死に行方を捜す両親、もうだめなんじゃないかと思った矢先に奇跡が起こり……何度読んでも胸がいっぱいになるお話。娘にこの絵本のどこが好きなのか聞いてみると、「だって、もし私が行方不明になったらお父さんもお母さんも一生懸命捜してくれると思うねん。それを考えるとなんか幸せやし嬉しいから」ですって。

 こんなまっすぐな思いを伝えてくれて、お母さんも本当に嬉しいし幸せ。そして何より、ついつい感情をぶつけてしまう日もある中で、「私は愛されているんだ」という喜びがしっかりと娘の中にあることに気づけてホッと胸をなでおろしたのは言うまでもありません。絵本がもたらしてくれたこの喜び。これらが娘の心の中の「宝物」になってくれたらいいなと思いながら今日も絵本を読んでいます。
(おおばやし・めぐみ)