子ども歳時記132 さぁ、皆さんも、あの決め台詞をご一緒に!(大久保 広子)

大久保 広子
大久保 広子

 新型コロナウイルスの脅威は依然衰えず、皆さまも感染予防に気をつかう日々をお過ごしのことと思います。

とまとさんがね
とまとさんがね

 特に、食育には力を入れていて、毎月、趣向を凝らした主食&副食メニューが登場します。その中でも「子どもと一緒に味わう日」は、美味しさも楽しさも格別です。園庭で育てた野菜や果物を収穫してじっくり観察。触れたり匂いを嗅いだり、つぶしたり、切ったり、ゆでたり、焼いたり……と、その時々の旬の食材をいただくひと時です。私も企業内保育園の施設長として時々行事にお邪魔するのですが、子どもたちが食材を楽しむ過程の中で、「読んで読んで」と、持ってくる本があります。それは、とよたかずひこさんの「おいしいともだちシリーズ」(童心社)です。

 プチトマト、いちごの収穫時には『とまとさんがね・・』 『いちごさんがね・・』、焼き芋大会には『おいもさんがね・・』、節分には『なっとうさんがね・・』、凍り豆腐スープの時には『とうふさんがね・・』、おにぎりを握ってみようの会では『おにぎりくんがね・・』、新年会のおもちつきでは『おもちさんがね・・』と、子どもたちはあの(・・)ページ(・・・)がくるのを、身体をゆすりながら、手をぎゅっと握りながら、待って待って待って……。ページがめくられ……。あの(・・)ページ(・・・)になると同時に”どっかーん“という効果音が聞こえそうなほど大きな声で(まだお話ができない0歳児さんは一生懸命手を伸ばして)あの(・・)決め台詞を楽しむのです。「しんぱいごむよう!」

 これぞ、まさに心身をはぐくむ絵本。毎回、音が聞こえるのではないかというほど、私の身体中の細胞も活性化しているように感じる幸せなひと時です。

 コロナ禍であっても、園庭の花は美しく咲き、野菜たちはぐんぐんと大きくなり、蜂はやってきて、ダンゴムシも這いまわっています。私たち大人も、命を守るための策を講じつつも必要以上に縮こまることなく、のびやかに軽やかに過ごしたいものですね。

(おおくぼ・ひろこ)