絵本体験記290 私のかけがえのない時間 塩谷 裕子(兵庫県)

~絵本フォーラム第130号(2020年05.10)より

 

かけがいのない時間
私のかけがえのない時間 塩谷 裕子(兵庫県)

 「本好きになってほしい。あわよくば、賢い子に」これが、私が絵本の読み聞かせを始めたきっかけでした。下心があり、今思うと恥ずかしいです。しかし読み聞かせを続けるうちに、当初の考えは重要ではないと自然に感じるようになりました。なぜなら私が考えていた読み聞かせによる効果以上のものを私は受け取っていたからです。それは「親子のかけがえのない時間」です。子どもと心通わすことができる幸せな時間です。『くっついた』(三浦太郎/さく、こぐま社)は長女と初めて心を通わすことができた絵本です。読み聞かせをしながら、私と娘が、そして娘を挟んで私も夫も娘と実際に頬をくっつけました。

 娘の頬の柔らかさやうれしそうな笑顔が、温かな感情とともに私の胸に刻まれています。娘が喜んでくれるので何回も読みました。この温かで幸せな時間こそが私の宝物です。私は自分の家の絵本棚を「かたばみ文庫」と名付けています。由来は長女の誕生日花が「かたばみ」だからです。

 そしてその花言葉は「喜び」「輝く心」「母の優しさ」なのです。まさしく絵本で子育てする私の想いだと思いました。かたばみ文庫には娘や息子との思い出のつまった絵本が並んでいます。そして「今日は何を読むかな」「どんな反応をするだろう」とわくわくしながら毎日読み聞かせをしています。絵本の読み聞かせは、今では私にとってなくてはならないものです。幸せな体験をさせてくれている子どもたちに感謝です。このかけがえのない時間を少しでも長く楽しみたいと思っています。
(しおたに・ゆうこ)