子育ての現場から 11  リトミックで親子を応援

中山 敦子(なかやま・あつこ)

 リトミックを教えて11年経ちました。今は0歳~5歳までのお子さんが教室に通ってくれています。
 リトミックは、スイスの音楽教育家、エミール・ジャック=ダルクローズ(1865~1950)が考案した教育法です。

 レッスンの様子をご紹介しましょう。子どもたちは、ピアノの演奏を聴いて、これは歩く速さだと判断し音に合わせて歩きます。演奏は変化していくので、耳をかたむけ集中していなければいけません。突然音が止まります。子どもたちもすぐに足を止めます。赤信号かな。次は違う速さで演奏します。これはさっきのスピードと違うぞ、走る速さだ、さあ周りに気をつけて走りますよ。電車になったつもりで走る子もいます。安全運転でお願いしまーす。またまた音が止まります。全力で走っていた子は、おっとっとっと、倒れないように気をつけて。さあ次はどんな速さか予想すると、聴こえてきたのは、ゆっくりとした音楽。ひざをしっかりまげて1歩1歩足を踏み込んで進みます。ひざを曲げたとき身体がグラグラ揺れないようにお腹の力を使ってね。おやおやゾウさんに変身している子もいます。手をユーラユーラ揺らしてゾウさんのお鼻ね。
 これはレッスンのほんの一部。子どもたちは、身体感覚を通して音楽を、そして自分と自分以外の世界を学んでいきます。ですが、子どもですから、皆同じようには動きません。皆が同じ音楽を共有する「輪」も、それぞれの表現が違う「個」も、リトミックではどちらも大事にしています。ゆっくりとした音楽を聴いて、ゾウさんになる子もいれば、怪獣になる子もいます。または、床にごろーんと寝転がる子もいます。今日はやりたくないのかもしれないし、寝転がって皆の姿を見たいのかもしれません。どんな時でも強制はしません。

 子どもとのコミュニケーションは、ちょっとしたコツがいります。例えば「走っちゃだめ!」と言うより「歩こうね」「落ち着いて」と具体的にどうしてほしいかを伝えた方が、子どもは理解できます。「投げちゃだめ!」と言うより大人が物を大事に扱う姿を見せることで、これは大事なものなんだと覚えます。「ごあいさつしなさい」「ありがとうって言いなさい」「ごめんなさいしなさい」と無理やり子どもに言わせるより、大人がしている姿を見せるので十分です。「どうしたらいいかな」と子ども自身に考えさせてあげるのも必要な経験です。

 子どもの行動を良い悪いで判断せず、まずはその気持ち、表現を受け止めてあげることが大切です。(もちろん、命の危険にかかわること、人を傷つけることなど、いけないことは教える必要がありますが)。 子どもの気持ちを代弁してあげたり、ぎゅっと抱きしめてあげたり、そうして寄り添い支えてもらった経験は、やがて外の世界へ羽ばたいていく子どもの力となるでしょう。

 最近は、家で親子二人何をして遊んだらよいか分からないと、リトミックを始める方も増えています。
レッスンでは、お家で出来る遊びの紹介や、絵本の読み聞かせも行っています。絵本講座で学んだコミュニケーションの大切さを、たくさんの親子に伝えていきたいです。笑顔のふれあいを通して、皆さんが子育てを楽しんでもらえますように。

(なかやま・あつこ)