絵本体験記285 息子と絵本とおとうちゃん 南部 佳代 (兵庫県)

~絵本フォーラム第128号(2020年01.10)より

息子と絵本とおとうちゃん
息子と絵本とおとうちゃん
南部 佳代 (兵庫県)

 4歳の長男は、ダンゴムシに夢中だ。ダンゴムシが載った絵本をそっと本棚に仕込んでおいた。ダンゴムシを見つけると、「あっ、ダンゴちゃん!」と言いながら、その絵本を満面の笑みで持ってくる。ほうら、きたきた、思った通りだ。

 子どもの反応を想像しながら絵本を探すのは楽しいもの。思った反応と違うのもまた興味深い。慌ただしい1日を終え、ほっとするのが毎夜の絵本時間。好きな絵本を読み終えて、満足気に寝ころび、おしゃべりを楽しみ、いつのまにか寝入る姿をみていると、彼らも絵本時間を楽しんでいる様子だ。

 そして、休日の絵本時間にいい役割を果たすのが父親。先日、絵本の勉強会があり留守を父親に任せた日のこと。私が『ゴリラのおとうちゃん』(三浦太郎/作、こぐま社)を買って帰ると、長男は「ママがゴリラの絵本持って帰ってきたで~」と、丸1日子守をしてヘトヘトの父親に持っていった。《ええてんきやなあ》《なあ おとうちゃん あそんで~や》、大阪出身の夫は関西弁の絵本に「おっ」と思ったようで、イントネーションも大げさに、気合が入る。ゴリラの親子が、《おとうちゃんすべりだい》《おとうちゃんひこうき》……とやっていくうちに夫はだんだん苦笑いになる。読み終えたら、絵本の内容と同じことをやりたくなるのが子どもたちだ。

 《ブンブンブーン“おとうちゃんバイク”》、最後は絵本そっちのけではあるが、「なあ もっかいしてー」がとまらない。絵本1冊でずいぶんといい時間が過ごせるものだ。
(なんぶ・かよ)