絵本体験記284 絵本で知る娘の「好き」 小林 千華 (東京都)

~絵本フォーラム第128号(2020年01.10)より

 絵本と聞いて、一番に思い浮かべるのは『みにくいあひるの子』である。

幼い頃、私は布団に入る時毎晩のように「この本を読んでほしい」と母に頼んでいた。 私にとって、絵よりも文字の方が多い初めての絵本だった。繰り返しこの本を読んでほしいとせがまれる母は少し面倒くさそうだったが、どうしてもそれを読んでもらいたかった。

絵本で知る娘の「好き」
絵本で知る娘の「好き」
小林 千華 (東京都)

子育てを始めて2年。私にとって、絵本の読み聞かせは「子育ての安心できる基地」のようなものになりました。
0歳の頃は、娘に絵本を読みながら、まだ知らない世界を紹介して、安心して生きて大丈夫だよと伝えていたように思います。そして1歳を過ぎ、歩き出した時、絵本で見ていた世界を実世界で確認して味わっているようで、娘はとても楽しそうでした。

くまくん絵本の『いってきまあす!』(福音館書店)の「しんごうがあかですよ」のページが好きになり、横断歩道で信号を見ながら「赤で止まる、青で渡る」を夢中になって45分も繰り返したことがありました。また『はっぱのうえに』(福音館書店)の絵の美しさに1歳児がうっとりして、てんとう虫が大好きになり、散歩中カラスノエンドウを見つけると、てんとう虫を真剣に探し、見つけると大喜びしたこともありました。

絵本が娘の「好き」を教えてくれました。娘の喜ぶ顔が見たくて、毎日絵本を何度も何度も読み、好きな絵本が一冊また一冊と増えていく。その繰り返しが心地よい時間となり、私たちは親子になってきたのだと思います。これから娘が何に興味を持って夢中になるのか、その変化を見つけて、私がその環境を整える。それができるのも絵本の読み聞かせの時間があるからです。

「よんで!」と娘が持ってくる限り、また「もう一回」と言ってくる限り、思う存分、娘に読み聞かせをしたいと思っています。これからどんな絵本を娘が持ってくるのかとても楽しみです。
(こばやし・ちか)