私の絵本体験記
「絵本フォーラム」30号(2003年9.10)より
絵本がくれた親子の絆
藤城 裕子さん(山形県山形市)

写真  ほるぷフォーラムとの出会いは、主人の転勤で初めての土地に来たばかり、息子が7カ月のころのことでした。寒い冬のまっただ中、昼間は2人きりの育児。何をして過ごしたらいいのか途方にくれる日もありました。そのころはちょうど、子どもの絵本選びについて考えていた時期でもありましたので、説明を聞き、共感は覚えました。しかし、値段も張るし、私なら選ばないのではという絵本も中にはあり、このようなたくさんの絵本をまだ1歳にもならない息子に一度に与えるのはどうかと思い、しばらく決心できずにいました。
 購入の検討をしている間、私は図書館通いをしたのですが、毎日読み聞かせを続けるには、手を伸ばしたらすぐに絵本が取れるという環境が必要であることがわかりました。そこで、まずは購入してみることにしました。
 絵本が届いたころ、それが絵本とはわからない息子は投げたり、口に入れたりして、おもちゃのように遊んでいました。ところが、ひとたび絵本を読み始めると、じっと集中して聞き入り、ときにはニコリと笑顔まで見せて、赤ちゃんなりにも感じ取れるものがある様子でした。夏には、主人とスイカを食べているところに『くだもの』の絵本を持ってきて、スイカのページを開いて見せてくれたこともありました。そのころ、息子はまだ言葉は話せませんでしたが、絵本を通してコミュニケーションを取る意思表示をしたのかもしれません。また、息子は私が選びそうにないと思っていた本も楽しんでいるようです。
 あれから1年以上がたち、振り返ってみますと、絵本の読み聞かせは親子の絆を保つ大切な存在になっているような気がします。たとえ私が忙しさなどで気持ちに余裕のない日であっても、寝る前の絵本タイムは、私も息子もゆったりとした気持ちになることができます。選び抜かれた絵本の読み聞かせは、読み終えた後の安心感と絵本の持つ奥深さで、私たち親子を心温まる気持ちにさせてくれるのです。
 子どもが小さいころに本物のよい絵本に出会えたことに感謝しつつ、これからも親子で読み聞かせを楽しんでいきたいと思います。
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