こども歳時記
〜絵本フォーラム第21号(2002年03.10)より〜
すてきな詩にであいました
ある日の朝、こんな詩にであいました。
〈おみおくり〉
おみおくりが/だいすきです/おうちで/ばいばいじゃ/つまらないから/
かどまでいって/しんごうまでいって/いそいで/かえってきます

それから何ヶ月もしないうちに再び素敵な詩が目にとまりました。
〈こもちししゃも〉
おさかなは/だいすきだけど/こもちししゃもはたべられません/
おかあさんとこども/いっぺんになんて

 どちらも産経新聞の『朝の詩』に掲載されていたものです。こんなやさしい、あったかい詩の作者は平岡あみちゃんという7歳の女の子でした。きっと小さい頃から愛情をいっぱい受けて、たくさんの言葉の中で育ってきたのでしょう。
言葉の栄養失調に気をつけて
 愛されていると優しくなれるという経験をもっている大人は多いはずです。そして、自分の気持ちを言葉にする時、使いこなせる言葉をどれだけもっているかで、伝わり方に差が出てきます。わかってもらえたり共感を得られた時にはうれしさや安心感が、わいてくるものです。わかってもらえないと、イライラしたり怒ったりと気分がささくれてくることも多いですね。
トビウオのぼうや
『トビウオのぼうやはびょうきです』
(金の星社)
 どうぞ、子どもたちにたくさんの言葉を食べさせてあげてください。現代の子どもたちは言葉の栄養失調で、苦しんでいるようです。自分の気持ちを言葉で整理、統合できなくて、無気力、不安、怒りに支配されているようにみえます。
 今から20年前、シカゴ市の教育長が「もしも世の親たちが、学齢前のわが子に日に15分、本の読み聞かせをするようになれば、学校に革命を起こすことができるでしょう」と発言しています。昨年12月、日本でも「子どもの読書活動推進法」が施行され、子どもの読書活動推進を「国や自治体の責務」とし、保護者には子どもの読書機会を増やすよう求めています。こうまでしないと、本離れに歯止めがきかないというのと同時に、読書が子どもたちの問題解決に役立つと見直されてきたということではないでしょうか。
もういっかい 読んで!
 むずかしい理屈を並べなくても、読んでもらった幼い子どもたちは「もっともっと読んで!」と要求してきます。大好きな人のあたたかい声に包まれる時間が心地いいから。入学・進級のこの季節には『くんちゃんのはじめてのがっこう』(ドロシー・マリノ作、まさきるりこ訳/ペンギン社)、もう読まれましたか? 大きな子なら自分の成長を感じる子や、幼い日を思い出す子もいるのではないでしょうか。3月に忘れずに読んでほしいのが『トビウオのぼうやはびょうきです』(いぬいとみこ作、津田櫓冬絵/金の星社)。1954年3月の第5福竜丸の事故後に創られた絵本です。大人はぜひ解説まで読んでほしいと思います。 くんちゃん
『くんちゃんのはじめてのがっこう』
(ペンギン社)

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