〜絵本フォーラム第20号(2002年01.10)より〜
伝えていきたい風習・由来
 みなさん、どんなお正月を過ごされましたか?
 子どもの頃はお年玉がもらえるのを楽しみに待ったものですが、大人になった今ではこわいお正月…かもしれませんね。とはいえ、久しぶりに親戚と集ったり、普段とは違う行事を楽しみたいですね。そして、子どもたちに何かを伝えていきたいですね。
 とはいうものの、私自身「鏡餅」の由来すら知りませんでした。昔、鏡は円形で、魂を象徴する神器だったのがその名の由来で、生命力を授かるのだそうです。また、「裏白」は潔白と、葉が対になっているところから、夫婦円満を表しているそうです。若葉が出るのを待ってから古い葉が落ちる「ゆずり葉」には、子孫繁栄の願いが込められているようです。昔から伝えられてきたことには、何かしら意味があるようです。おせち料理に使う黒豆はまめに働くとか、こじつけのようなものもありますが、大人でも意味や由来を知るとちょっとおもしろいですね。こういう知る楽しさを子どもも大人ももっと体験できればいいな…と思います。
絵本は人生に三度
絵本の力
『絵本の力』
(岩波書店)
 子どもに何かを伝えようとすると、自分の知らないことの多さに気がつきます。そして、子どものおかげで新しい世界を感じることも多々あります。『絵本の力』(河合隼雄・松居直・柳田邦男著/岩波書店)の中で、柳田邦男氏は「絵本は人生に三度読むべき本」と書いています。それは「子どもの時、子どもを育てる時、人生の後半に入った時」そして「生きていく上で一番大事なものは何かといったことが、絵本の中にすでに書かれています」。子どもがいてくれたからこそ出会った絵本の数々は、私にも多くの世界を教えてくれます。
 この季節には『ゆきみち』(梅田俊作・佳子作/ほるぷ出版)などいかがでしょう。孫に語りかける「うんとなけ、きがすむまでなくがええ」というおばあちゃんの言葉がとても温かいのです。そして、いつも見守ってくれている祖母の存在を、孫は感じているのです。それと、節分の頃にぜひ読んで欲しいのが『おにたのぼうし』(あまんきみこ作・いわさきちひろ絵/ポプラ社)です。やさしい鬼のおにたがせつなく、やさしさって何だろう…と考えさせられます。 おにたのぼうし
『おにたのぼうし』
(ポプラ社)
絵本は子どもだけのもの?
 絵本の魅力を知る、というのは子どもがいたからという人がほとんどではないでしょうか。私もその中の一人です。子どもが育つのにとても役に立っている気がしますが、大人の私にもいいのです。元気がもらえて、優しくなれて、包んでくれる。今年は、あなたも絵本体験してみましょうよ。ほ〜っとあったかくなれますよ。

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