リレー

子育て文化の伝承を「地域の力」で
(山形・小国町子育て支援センター係長・岩沢 ちか)


 私は、現在48歳。大学生と高校生の母親として、また、小国町子育て支援センターの職員として、毎日「子育て支援」と向き合っている。自分の子育ては間もなく終わろうとしているが、この子育ては、本当に多くの人々に支えられてきたと振り返っている。
 私が出産と育児を経験した20年前と今では、子育ての環境は大きく変わってしまった。昔がよかったなどと言うつもりはないが、あのころにはあって今はないものがたくさんある。多分、「子育て文化の伝承」とも言うべき大切なものが伝わらなくなり、なくなっていっているのだと思う。
 初めての出産、育児となれば、どんな親でもわからないことだらけ、手がかかって面倒なことだらけ。それでも、わが子の笑顔は天使のように愛らしかった。こんな状態の私を助けてくれたのは、家族であり、地域のおばあちゃん、同じように子育てまっ最中のお母さんたちだった。子どもの顔を見て「おっきぐなったな」「めんごぐなったな」と言われるだけでうれしかったし、オムツをかえるにも離乳食をつくるにも、昔からこうしてやっていたという「子育て文化」を、あちらでもこちらでも聞くことができた。つまり、「地域の力」に助けられながら子育てができたのである。
 さて、今はどうだろう。地域に子どもが少なくなって、サークルにでも入らないと、ほかのお母さんたちと話もできない。核家族化が進んで、おばあちゃんに子育ての方法を聞くこともできない。子育てに孤立してしまったら、余裕がなくなって泣きたくなるだけだと思う。「子育て文化」を伝えてくれる「地域の力」をどこに求めればいいのだろう。
 そこで登場したのが「地域子育てセンター」。子育て中のお母さんを孤立させないために、様々な事業に取り組んでいる。しかし、まだ設置して1年半のセンターにとって、この役割は荷が重い。とにかく手探りで支援を続けている。今は、それぞれのお母さん、お父さんの持っているニーズが多種多様で、支援もそれに応じて内容を変えなければならないことに気づいて、子育て支援の難しさがわかってきたところである。さらに、支援の幅を広げるにはセンターの職員の力があまりにも小さく、子育ての先輩であるおばあちゃん、子育てまっ最中のママたち、それに何よりお父さんの力、豊かな自然、昔から培われてきた人情、それらすべての「地域の力」をかりて支援を続けたいと考えている。
絵本フォーラム34号(2004年05.10)より

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