リレー

学ぶは真似るから
(山形市東原幼稚園園長・粟野 桂子)


写真  子どもは模倣が大好きで、物ごとの善し悪しに関わらず、すぐ真似をします。年齢が低ければ低いほど、その仕草の可愛いさに周囲の大人は、もう一回、もう一回と愛くるしい仕草を要求します。子どもが夢中になって、応えてくれる無私の心やそのパワーを貰います。そして、誰が教えたわけでもない子どもの言動にはっとさせられ、思わず苦笑し、自らの立ち居振る舞いを考えさせられます。
 本園の子どもたちは『先生ごっこ・幼稚園ごっこ』が大好きです。誰もが自分の大好きな先生になって、見よう見まねで覚えた先生の特徴を巧みに演じます。その様子を見たお母さん達は「わが子が何先生役か、みんな分かる」とおっしゃいます。知らないのは先生のみでしょう…。通園バス内でよく聞かれる「先生ごっこ」は、園の事務室と通園バスを結ぶ無線の交信を真似る「ことばあそび(?)」です。大好きな先生役になったKちゃんと事務室の先生役Sちゃんの交信の様子です。

S「こちら事務室の○○ですが、2号車さん現在地どちらでしょうか?お知らせください」
K「こちらは2号車の△△です。現在地は◎◎ちゃんの家に来ています。」
S「はい、了解しました。ありがとうございます。」

 子どもたちは名役者で、役になりきるのがとても上手です。絵本を読んでやると場面に自らを投影し、登場人物になりきって、絵本の世界で遊びます。
 こうしてみると、子どもは模倣を通して、自分の世界を広げていきます。そして、その対象は大好きなお母さんや先生をはじめ、身近な人々です。その人たちの生き方そのものが、子どもを育てていると言えるでしょう。 
絵本フォーラム22号(2002年05.10)より

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