リレー

読書の時間
(山形市立村木沢小学校校長・遠藤 正男)


写真  私は、かつて「ことばの教室」(言語障害学級)を十数年間担当しました。それは、ことばが話せないなどの症状を持つ子どもたちの学級です。多くの幼児や小学生が通級していました。
 ことばの教室には待合室があり、そこには多くの絵本が準備されておりました。いつも学習が始まるまでのわずかな時間、母と子の読み聞かせが始まるのでした。
 その様子を見つめながらこんなことに気付いたものです。通級の回数が増えるにつれて、母親のゆったり雰囲気での読み聞かせの中から、温かいことばや表情でのやりとりが生まれてくるのです。それにつれ、次第に子どものことばが発達してくるのでした。
 ことばは母と子との密着した関わりの中で発達し、絵本がその大事な関わりの仲立ちとなっていたのです。
 ところで、私が現在勤務する小学校は、農村地帯に位置する小規模校です。
 子どもたちは、とても明るく素直で、与えられた課題にはよく取り組みます。しかし、自分の気持ちを言わない子どもたちなのです。
 それは、最近よく言われるように、「聞く話す」の生きた体験を十分に積まなかったために、人の話を聞く力、自分の気持ちをことばにする力がついていないのです。言わないのではなく、言えないと言ったらいいでしょうか。
 そこで、本校では、朝学習の時間に「読書の時間」を設け、読み聞かせや読書に取り組んでいます。
 それは、ことばを話せない子どもが絵本を仲立ちとしてことばを育んでいくように、子どもたちが本を読むことによって、「聞く」「話す」「書く」力を向上させ、生きる力としての言語能力を身につけさせたいと考えたのです。
 毎朝、全校水を打ったような静まりの中で、楽しい1日が始まっています。
絵本フォーラム21号(2002年03.10)より

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