リレー

子どもを守ること
(甲子園学院幼稚園園長・石川和代)


写真  戦争の世紀といわれた二十世紀が終わり、輝かしい新しい世紀の幕開けを夢見て気持ちも新たに迎えた二十一世紀でした。子ども達のよき未来は、私たちの社会の未来です。目の前の子ども達と向き合いながら豊かな心根を持った大人になってほしい、という思いを新たにした年でもありました。 その矢先に大阪教育大学附属池田小学校の事件が起こりました。それまでにも子どもにまつわる傷ましい事件が相ついで起こっており、日本の社会が乾きを帯び、殺伐になって来ているのを肌で感じつつも、そのように思いたくない気持ちもどこかに働いていました。しかし、今回のこの事件はただごとではありません。いつ何時、突発的な事が起きるかわからない不安感を大人社会に植えつけました。まさかと思うような事が起こり得る社会になってしまったことを認識せざるを得なくなったのです。 幼稚園や学校は基本的には人を信じて生活している場です。いろんな人の出入りがあっても不審に思わないオープンな面があります。そういう開放的な面が仇になる情勢になったということで、不測の事態に備えるため、自治体が素早く対応しています。それはそれで我々の危機管理意識を高めてくれていますが、根本的には子どもを守るために大人は何をしなければならないかを真剣に問い直すところから始めなければなりません。それは健全な子育てをすることでよき社会を創造することを目指すほかありません。
 幼児と過ごしている私は、さしあたって保護者の方々と語りあうことからだと思っています。幸い今年は、ほるぷフォーラムの出前講座をしていただき絵本も少し揃えました。図書貸出しも、お母さん方にお世話していただき、始まったばかりです。いつも一方的に話すことが多いので、少人数で読書会をして子育ての話を聞かせてもらおうと思っています。
絵本フォーラム18号(2001年9.10)より

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