はばたきの会交流会


<2018年度・第2回絵本講師の会 東京交流会報告> 
(2018/11/24・東京八重洲ホール
)


2018年度第2回「はばたきの会」東京交流会が11月24日、ホットココアが恋しくなる寒空の下、東京八重洲ホールにて開催されました。

  司会は、受付でニッコリしてくださったジェリー・マーティンさん(東京8期)と中田朋子さん(東京7期)。
大長 咲子ピンクのほほと素敵な笑顔が印象的な大長咲子副会長(芦屋1期)の挨拶で開会となりました。そして、2019年1月26日㈯13:30~「絵本で子育て」センターと上宮川文化センター(芦屋市)共催で、むのたけじ先生の映画「笑う101歳×2」の上映と、ご子息の武野大策先生のご講演を合わせて開催しますので、どうぞ足をお運びくださいとお知らせがありました。

 続いて支部紹介があり、鈴木哲子さん(東京2期)が「やまぶき」(山形・尾花沢地区)についてお話しされました。「継続は力なり」で、これまで活動を続けてきたことで、自治体より寄付をもらい、絵本を大量に購入し、図書館内に自分達の本棚を持つことができた。しかし、それに満足することなく伝える力を磨きたいとのことでした。また、お手製の地図を片手に、山形県の歴史や文学とのかかわりを語ってくださいました。

  もう一つ「おうちで絵本Libretto」(埼玉・足立地区)をジェリー・マーティンさんが紹介されました。個人の活動も大切だが、ミニ講座等を重ね、お互いに補佐できるよう全体のレベルアップに力を注ぎたいと前向きなお話でした。

 他にも中田朋子さんが、2ヶ月に一度メルマガを発行したり、15期を受講した絵本講師のお店でミニ講座を重ねているので、ご興味がある方は、ご一緒にいかがでしょうかとお誘いがありました。

 また、大長咲子さんは、主食絵本とおやつ絵本のお話を例に、継続することで、絵本講師冥利に尽きる体験ができたと報告があり、そのような体験を共有できる仲間をぜひ一緒に増やしましょう、とのお話がありました。

 午前の部は、後藤純子さん(芦屋4期)。演題は「きこえない、きこえにくい子どもへの読み聞後藤 純子かせ」です。
 普段は、県立聴覚特別支援学校で聴覚障害を持つお子さんのお母さま達に聴覚障害についてや、お子様さまとの関わりをアドバイスするお仕事をなさっています。演題をあえてひらがなにしたのは、「聞く」は、耳に入ってくる意味。「聴く」は注意して聞く意味があり、どちらも含むためだからだそうです。
 私達が読み聞かせをする際、一人でも聞こえにくい子ども、聴覚障害がある子どもがいた場合、配慮できる事は……
 ・マイクをつける
 ・周りは、できるだけ静かにしてもらう。
 ・本人または担任の先生に、どこの場所が一番ききとりやすいのか、座る場所を聞いてみる
 ・口元と絵本の高さを揃え、口元がよくみえるように、ゆっくり喋る です。
周りにいろいろな音があっても、人間はききたい人の声をきくことができます。それは、耳の問題ではなく脳の問題だそうです。補聴器は人の声だけでなく、周りのいろいろな音も同じように大きくしてしまうので、読み手として、気をくばれるところはありそうだなと思いました。後半は、手話と譜面台を使った『しろくまちゃんのホットケーキ』の読み聞かせを実演してくださり、とても感動しました。

 昼食時には、藤田一美さん(東京11期)から、えほんやなずなの講座開催や、ジェリー・マーティンさんのセサミストリート翻訳決定、増田友野さん(東京12期)企画の講座が好評、などの報告がありました。

久賀 弥生 午後の講座その1は、生き物自然科学大好き久賀弥生さん(芦屋6期)による「思春期の子どもたちと絵本」です。 久賀さんは、生き物の中で人間の10代の子どもが一番好きとのこと。その久賀さんのフィルターを通すと、あのはらぺこあおむしが10代の子どもたちに見え、絵本に登場しない母の愛まで感じるそうです。「どこが?」「何が?」と思った方、ぜひ久賀さんの講座を聞いてみてくださいね。かなりおすすめです。絵本を持って世界のどこまでも行くと仰っていました。
 子どもたちの小さなつぶやきを、かけがえのない言葉として真摯に受け止め、熟考していく。「読み聞かせで一番大切な事はなにか?」「なぜ絵本を読むのか?」という問いに、久賀さんは「そこにあなたがいてくれるから」と答えます。
 そこで、崩壊(久賀さんは、簡単に崩壊などと言って欲しくないと仰っていました)したクラスの読み聞かせを熱望し、初めは子どもたちに「何しに来とんねん」「帰れや」と言われました。避難訓練の日、『ゆずちゃん』を読み終え、避難するように指示された時、ある男子生徒が避難しようとしないので声をかけると「ええねん、俺、死んでもええねん。だって、俺の母さん、俺に死ねって言うもん」。久賀さんは、言葉でぎゅっと抱きしめたくなります。そんなエピソードから選んだのは『あなたがだいすき』でした。
 子どもたちを絵本でどうにかしてやろうなんて、とてもとてもおこがましい。ただ、そこに、読んであげたい子どもがいてくれるから、絵本を選び、読ませてもらっただけ。私の心の本棚に絵本を並べてくれたのは、子どもたちだったそうです。当時荒れていた男子生徒たちは今、陸上部で活躍したり、運動部のキャプテンになったりしているそうです。中川先生の「絵本を仲立ちにしてお互いに成長していく」という言葉が、私の中で大きくふくらんでいる、と締めくくられました。 交流会 4 杉沢さんの写真

 最後は、臨床発達心理士、杉沢智子さん(東京8期)による「心の成長を促す絵本のススメ~絵杉沢 智子本の役割を考える」です。
 杉沢さんは、絵本、大人、子どもの関係をもっと知りたい、科学的に分析したいと思って今に至っているそうです。
 乳幼児期の子どもは、表象機能(イメージする力)が発達してくる時期なので、話しかける事が大切。話しかけてもらえた事で、子どもは快状態となり、それが愛着の形成へつながる。加えて、気持ちをなぞる事も大切。行為そのものではなく、気持ちの部分に共感することが大切で、自分の気持ちを受け取ってもらえる事が一番大事だそうです。
 続いて、情感を育むためには、感情体験を積み重ねる事が良くて、それができるのは、絵本なのだそうです。想像力を育むためには、行間、絵と絵の間を読むことが大切。でも、これは、経験がなければ、うまくできない。子どもは生まれたばかりで経験がない。だからこそ絵本をみて、いくつもの経験を重ねられる事は、すばらしい事なのだそうです。経験を重ね、自分の思いをうまく伝える事ができたならば、それは、自信となり、さらにチャレンジ精神もわいてくるだろう。そのような相乗効果も期待できるのではないかと、仰っていました。
 最後に、昔は「ケンケンパ」など、音と体で音韻意識を育てる事ができたが、今難しくなってきている。だからこそ、絵本による、ことば遊びを大切にしてほしいと『さよならさんかく』や『しりとり』など楽しく読んでくださいました。

グループワーク グループワークを経て、久賀さんのレジメのことば「子どもを信じるとは、今、目の前の行為だけを信じるということではない。子どもを信じるというのは、将来の変容を信じるということ」を受けて、池田加津子副会長(芦屋2期)より「信じること、信じることとはどういうことか、を伝える仲間を増やしたいですね」という、言葉で閉会となりました。

 

 私のような絵本講師若葉マークには、とても深い学びとなる講座を一度に3つもきくことができ、幸せで贅沢な時間でした。 このような素敵なひとときをありがとうございました。

 

(しのむら・さちえ)篠村 幸恵



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