< 2012年度 第2回「絵本講師の会」東京・交流会報告書(2013.01.27)

 2012年度第2回「絵本講師の会」(はばたきの会)の交流会が、1月27日にラボ教育センターで開催されました。今回の交流会の参加者は、北は山形、南は宮崎から35名という東京会場の会としては、過去最高の人数の方々が参集しました。午前中の支部報告会と現在活動されている講師2名の話を中心にご報告します。

はじめに森ゆり子理事長と舛谷裕子理事のお話がありました。森理事長は「街を歩けば絵本講師にあたる」というくらい絵本講師の輪を大きくしていこうということ、今年講座開講10期目にあたる節目の年に、ジャーナリストであるむのたけじ氏を講演にお招きすること、松居直氏講演録の出版、『続々絵本講師の本棚から』の出版予定であるというお話がありました。


「3支部の支部報告会」

* 神奈川支部 団体名 「輪っか」 *
 現在9名で活動。2012年7月より神奈川県内のショッピングモールで定期的に「読み聞かせ・手遊び・絵本講座」を開催している。評判がよく、定員20組の枠が毎回いっぱいになってしまうほどだといいます。講座のテーマは毎回変えていて、テーマにあった絵本を毎回10〜13冊程度紹介しているそうです。メーリングリストを活用し、意見交換、絵本の選書などをメンバーでしていくので、各自のスキルアップにも繋がっている。別の講座の依頼もあるので、さらに発展していくようにしていきたいという締めくくりでした。

* 世田谷支部 団体名「絵本で抱っこ」 *
世田谷在住者だけではなく、広域からも講師が集まっている。昨年から世田谷区の子供基金の助成を受けて、1〜2カ月に一回程度のペースで講座を行っている。この活動を通して、子育てを支援している人達との繋がりができたのが大きな収穫である。2月2日(土)には子育てメッセにも参加し、「絵本110番」と銘打ち、絵本や子育てに関する相談や、絵本の朗読コーナーなども設ける。また、フェイスブックを利用し、世田谷支部のメンバーに限らず、新潟や石川など普段はなかなか会えない絵本講師との情報交換の場を設けているので、興味がある方は是非参加してほしいという呼びかけがありました。

* 西宮支部 団体名「絵がお」 *
2008年から助成金をもらった絵本講座を定期的に開催している。また、講師のスキルアップのための勉強会や「十人・十色・十日プロジェクト」を毎月10日に開催している。『絵本講師の本棚から』に登場する講師を招いて講座を開いています。「絵本講座はどこでも評判がいいので、どんどんやってほしい」ということを強調されていました。活動期間が長く、安定的に講座を行っている舛谷理事の今回の報告では、他にも講師を勇気づける言葉をたくさんいただきました。


「コミュニケーションと絵本」 ジェリー・マーティン氏

マーティンさんは普段、子どもたちに英語を教える仕事をしていますが、文法などを教えるのではなく、「コミュニケーション」を教えるようにしているといいます。

コミュニケーションを大きく分けると、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションに分かれます。言語コミュニケーションは「言葉を使ったもの」を指し、非言語コミュニケーションは「表情、アイコンタクト、身振り手振りなどを使ったもの」を指します。日常生活の中では意外にも非言語コミュニケーションがかなりの割合(65%)で使用されているそうです。マーティンさんは言語コミュニケーションについて、最近気になっていることがあるといいます。それは「○○してください」「ありがとう」をいう言葉を耳にしなくなったことです。マーティンさんは仕事柄、人に、「英語に自信がないのだけれど、海外旅行にはどんな言葉を覚えていくといいですか」ということを聞かれることがあります。マーティンさんは「サンキュー」と「プリーズ」という言葉が何よりも効果的でこれは万国共通だと答えるそうです。日本人が忘れかかっている大切な言葉が絵本にはちりばめられており、絵本から言語が学べるといいます。

次にコミュニケーションの変化について身近なエピソードを交えて紹介されました。「家庭で赤ちゃんに話しかけていない(話をしない)人が増えた」ということが、ここ2,3年で感じるそうです。外出しても、子どもの顔が見えないベビーカーに乗せているので、話を共有しにくくなるといいます。また、ある場所で3歳児が大人向けの経済ニュースを無言のまま見ていたので、外遊びに誘ったら「寒いから外には出たくない」という答えが返ってきたと驚きの答えが返ってきました。結局30分間も内容が理解できないその番組を観ていたそうです。コミュニケーションが不健康な状態になってしまっていると言ってもいいでしょう。

この講座の中でマーティンさんが強調されていたのが、絵本は「心の健康」に繋がるということです。絵本は親子のコミュニケーションの道具としても最適なものであり、肌を寄せ合いながら読むという行為は親子のスキンシップにも繋がります。最後に「絵本を使って健康なコミュニケーションを取り戻しましょう」という言葉で1時間の講座を締めくくられました。


 「絵本講座についての報告」 上甲知子氏(第8期修了生)

お仕事と子育ての傍ら絵本講師をされている上甲さんが絵本講座を開くところから、現在の絵本講師の活動にしていることなど、持参された絵などを交えて楽しく紹介してくださいました。「絵本で子育て」センターの養成講座の1年間を人と社会について深く学ぶ1年間だったが、修了してもすぐに仕事が舞い込んでくるわけではないので、公民館を利用して自分で講座を開いたそうです。開こうとしたものの、色々な問題に気づいたそうです。まずは、修了レポートで作成した絵本講座の内容をそのまま読むことができないということ、子連れで絵本講座にくると子どもがどうしても飽きて走り回ってしまうということです。これを解決するために、上甲さんはお子さんが書いた絵やご自身で書いた絵をうまく利用して、紙芝居方式で、子どもの興味も引きつけながら円滑に講座を行う方法をあみだしたそうです。絵も所所に仕掛けがあって、見る人を飽きさせない工夫がされています。また、難しい言葉を使うのではなく、誰でもわかりやすい言葉で講座を進めていくように心掛けているそうです。「仕事などで子どもに多くの時間はさいてあげられなくても絵本で繋がっている」という上甲さんの言葉が印象的でした。

 最後に…

丸一日の長丁場の会なのですが、前回同様に時間が経つのが本当に早く感じました。私自身の話ですが、昨年の春に講座を修了したものの、日々の雑事に追われて、講師としての一歩を踏み出せないでいました。そして、昨年の5月のこの交流会に参加し、自宅からさほど遠くない支部に所属させてもらいました。それからあれよあれよという間に、講師デビューを果たし、今も素敵な仲間と共に定期的に講座を開催しています。「別に仕事を持っている、子育てに忙しいから講座を自分でやるのは難しい」と思っている方でも、それぞれの活動の仕方ができるのが、この絵本講師の利点だと思います。年に数回開催の会ですが、参加された人は皆さん大きな刺激を受けて帰っていきます。この会は「絵本で子育て」センターの「はばたきの会」に登録されている方に案内がきます。まだ、登録をされていない方は登録をお勧めします。「絵本で子育て」の輪がもっと大きくなることを願いつつ今回のご報告とさせていただきます。(さくい・ともこ)


報告・作井 智子(東京8期)



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