情報紙『絵本フォーラム』で10回連載予定の『ほるぷフォーラム紙上絵本講座』です。

子どもの悲鳴が聴こえますか

− 1 −
現代社会の歪みの中で

 子どもたちはいま、悲鳴を上げています。よほど注意深く聴かなければ、決して聴くことのできない静かな、静かな悲鳴を…。しかし、のどが破れんばかりの、必死で、切ない悲鳴を…。
 あなたには、子どもたちの悲鳴が聴こえますか?
 現在、日本において私たちは「平和」で「豊か」な生活を享受しています。しかし、そんな「平和」で「豊か」な生活の影で大きな〈歪み〉が生じ、刻一刻と広がりつつあるのではないでしょうか。 現代に生きる人たちのほとんどが、その歪みの存在に気づいていません。そして、その気づいていないということが、最も恐ろしいことではないかと思うのです。
 その歪みのなかでいま、子どもたちは身をよじり、苦しみもがきながら、必死に声にならない悲鳴を上げ続けているのです。
 あなたに、そんな子どもたちの悲鳴がとどいているでしょうか?
 現代社会の歪みのなかで、子どもたちの〈育ち〉もまた、大きく歪み、壊れてしまっていると言っても、決して過言ではありません。非常に厳しい状況のなかで、子どもたちは生きている、あるいは生かされているのです。そして、その歪みがいま、不登校、いじめ、引きこもり、学級崩壊、青少年による凶悪な犯罪の多発など、さまざまな恐ろしいかたちで現れてきているのです。
 現代の子どもでも、何十年前、何百年前の子どもでも、変わりがあるわけではありません。みんな〈ゼロ〉の状態から生まれてくるはず。なのに、いま、まともに育つことの出来ない子どもが増えてしまっています。
 その〈育ち〉の過程において、いつか、どこかで歪みが生じてしまっているのです。その歪みは、いつ、どこで、そして、だれによって引き起こされているのでしょうか。
 私たちは、現代社会において、子どもたちがどのような環境で育っているのかを学び、そのなかで私たちが果たしている役割をしっかりと認識しなければなりません。そうすることによって、この現代社会の歪みの中で子どもたちが上げ続けている悲鳴が聴こえるようになり、それに対して、私たちが何ができるのか、何をしなければならないのかが見えてくると思うのです。
 現代社会において私たちを取り巻く環境とはどういうものなのか、子どもたちを取り巻いている環境とはどういうものなのか、いくつか具体的な事例を挙げながら、お話ししていきたいと思います。

前へ次へ