テレビの悪影響 (私たちとテレビ 2) テレビを長時間見ることによって、子どもが受ける弊害については、昔から、多くの研究者によって、さまざまな報告がなされています。そして最近では、もっと深刻な影響が、子どもたちに出始めています。そのいくつかをご紹介してみましょう。 子どもは1歳ぐらいになったとき、「うまうま」「まあまあ」というようなことばを発し始めます。それを初語(子どもが初めて発する意味のあることば)と言います。恐ろしいことに、0歳からテレビを長時間見ている子どもは、そのときに流行っているアニメのせりふ、CMのキャッチフレーズなどを初語として発することがあるのです。 しかも最近、その初語が遅れ始めてきました。本来、1歳前後で初語を発するはずなのに、1歳半になっても出てこない。2歳になっても、まだ出てこない。そのようなことばの発育不全が現れるようになってきたのです。 また、アメリカの女性ジャーナリスト、ケイト・ムーディ氏が、テレビをずっと見ていることで、子どもは腑抜けになってしまうという研究を発表し、〈ゾンビ・チルドレン〉という概念を提唱しました。 テレビを見ていると、音や光が瞬間的、一方的に、どんどん頭のなかに入ってきます。それを全部受け入れられないと、子どもたちは頭のなかにバリアを築いてしまいます。そのときの子どもは睡眠しているのと同じ状態で、周りのことを何も感知しなくなってしまうのです。 一生懸命テレビを見ている子どもに「おい」と呼びかけても、何も反応しないことがあります。テレビを一生懸命見ているから反応しないのではありません。頭のなかにバリアをつくって、何も受け付けない状態になってしまっているのです。これが〈ゾンビ・チルドレン〉です。そんな子どもたちが現在、急激に増えつつあるのです。 また、数年前、テレビアニメを見ていた子どもたちが、突然、一斉にけいれん症状を起こすという事件がありました。さまざまな要因が重なり起こったことですので、すぐに「アニメを見るのは身体によくない」と決めつけることはできませんが、テレビが子どもの脳に対してそれだけ強い影響をもっているということが、はっきりと目に見えるかたちで明らかになった事件でした。 その他、テレビの悪影響については、枚挙にいとまがありません。身体的には視力の悪化、姿勢の悪化などの影響が顕著です。また、精神的にも、善悪の混同、考える力・想像力が健全に育たないというような影響が挙げられています。 テレビが絶対に悪者だと言うわけではありません。しかし、子どもが小さいころから無制限にテレビを与えていると、このようにさまざまな悪影響をもたらしてしまうのです。 テレビのある生活が〈当たり前〉となったいまだからこそ、テレビとの上手なつきあい方を、もう一度、真剣に考えてみる必要があるのではないでしょうか。 |