私の絵本体験記

「絵本フォーラム」85号(2012年11.10)より
「死んだアヒルさん」と天使の絵
熊谷 みのりさん(宮城県仙台市)


 私は約2年前から韓国人の7才の女の子に絵本の読み聞かせと日本語のサポートを行っている。特に絵本の読み聞かせは、絵本を読んであげたいが日本語があまりできない彼女の母親からの依頼であった。就学前からスタートしたので当初は読み聞かせが主であった。多い時は5〜6冊、少ない時でも3冊は読む。
 学校に行くようになり、教科のサポートも必要になってきた。おもしろいことには宿題の教科書の「音読」はなかなかやりたがらないのに、絵本だと喜んで音読をしてくれる。漢字の書き取りの宿題をしている時でもBGMがわりに私の朗読に耳をかたむける。気乗りしてなさそうな時に、一瞬やめると、「聞いてるよ! 続けて!」とすかさず催促の声が飛ぶ。
 最近、『死神さんとアヒルさん』という絵本を読んであげた。突然「紙、ちょうだい!」と言うので渡してあげると、そこに天使の絵をかいてくれた。アヒルさんが天国に行けるようにというやさしい思いからだった。「天使さんっていると思う?」との問いかけに、「目には見えないけれどきっといると思うよ」と答えた。すると自分に言い聞かせるように「やっぱりいるよね……。」と目にうっすら涙をうかべていた。子どもなりに「死」について何か思う所があったのであろう。こんな様子を目の当たりにすると子どもの純粋さに思わず感動してしまう。
 実は彼女の父親は牧師なのである。私はクリスチャンではないが時々聖書にまつわる話も取り上げている。私の彼女への日本語のシャワーが心の栄養になってくれている事を信じて継続している。
 はたして、どんな花が咲いてくれるだろうか。(くまがい・みのり)

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