私の絵本体験記

「絵本フォーラム」80号(2012年01.10)より
「私の絵本体験」
矢部 晶子さん(アメリカ・アリゾナ州)


 私が絵本の素晴らしさに魅了されたのは、初めての育児に疲れ切っている時でした。

 長男が生後3ヶ月の時に、義父母がアメリカから会いにやってきました。義母の膝の上で読み聞かせをしてもらい絵本をじーっと見つめている長男。その姿を見て、この子は絵本が好きなのだと私は勝手に思い込みました。
 いざ本屋へ行ってみると、沢山ある絵本を目の前に、どの本が長男の月齢に向いているのか、どんな本がいいのか選べず、何も買わずに帰ってきてしまいました。両親が既に他界し夫が外国人の私にとって、0歳児の育児や行事は、相談や準備の確認をする相手がいないため、“育児は大変”としか思えないものになっていました。  
 
 長男が7カ月の時、小児科の待合室で、一冊の絵本を何気なく手に取りました。『はなのあなのはなし』(著、イラスト やぎゅうげんいちろう 福音館書店) 長男に読んでいたはずが、読めば読むほど笑いが止まらなくなり、ついに涙が出てくるほど大笑いをし先が読めなくなってしまいました。

 帰り道も頬の痛さを感じながら思い出し笑いをしていました。今までの硬い気持ちが一気にほぐれ明るい気持ちになっていました。絵本が私の気持ちを救ってくれた、絵本ってすごいなぁ、と強く感じました。現在、アメリカに住んでいます。日本でまとめ買いをし、持参した絵本を寝る前に読んでいます。最近では、長男が読む絵本と私が読む絵本を数冊持ってきて、読みあいながら楽しい一日の終わりを過ごしています。『はなのあなのはなし』みなさんも一度声に出して読んでみてはいかがでしょうか?(やべ・しょうこ)

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