私の絵本体験記

「絵本フォーラム」76号(2011年05.10)より
「娘との合言葉「りんりん、しゃんしゃん」」
田中 由比佳さん(兵庫県神戸市


 二歳になったばかりの娘と、電車ごっこをしていたときのこと。
  娘が、突然、「りんりん、しゃんしゃん、りんりん、しゃんしゃん」と言って、楽しそうに走りはじめました。私は、電車だから「がたん、ごとん」でしょと思いながらも、にやけた顔が、なかなか戻りませんでした。なぜなら、そのフレーズは、最近、娘がよく読んでとせがむ、『りんりんはしろ!』という絵本の中で、出てくるフレーズだったからです。
  その絵本は、動物たちが、雪の上でソリを滑らす物語です。もう、春だというのに、今、娘は、この季節外れの絵本が大好きです。動物たちと、一緒にソリに乗っている気分になれるのかな。
私も、何度も読んでとせがまれるうちに、実は最初はなんだかしっくりこなかった、この絵本の虜になっていました。こうして、絵本の面白さを、子どもから教えてもらうことも、多いのです。
  それからというもの、娘は、何か乗り物に乗ると、車でも、ブランコでも、思い立ったように、
「りんりん、しゃんしゃん、りんりん、しゃんしゃん」と口ずさむようになりました。そして、私は、このフレーズを聞くたび、にやけた顔がなかなか戻らないのです。だって、その瞬間、私たち親子が、思い浮かべているシーンは、きっと一緒。あの、動物たちが楽しそうにソリを滑らすシーンです。一緒に絵本を楽しんでいるからこそ、わかり合える瞬間です。
  このように、日常の楽しい時間の折に、ふと絵本の1シーンを思い出して、楽しそうにフレーズを口ずさむ娘を見ていると、こんなにも絵本の世界が、娘の心の中に残っているのだと、とても嬉しく思います。
  そして、絵本を読んでいる時はもちろんのこと、読んでいない時にだって、
絵本の世界が、娘と私の中に染み込んでいて、それが、親子の絆を深めてくれていることを、実感しています。
  次に、娘が気に入る絵本は、どんな絵本かな。これからも、絵本で子育て、楽しみます!(たなか・ゆいか)

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