リレー

すべての人に大切な読み聞かせ
大阪・ラボ・テューター 坂枝 寿代

 最近は何事も二極化の時代です。貧困層と富裕層。食事にこだわる人と安いレストランで外食を繰り返す人。絵本に関してもこのことはいえるでしょう。毎日、子どもに絵本を読む人とぜんぜん子どもにそういったことをしない人。

 では、子どもに絵本を読み聞かせる人は、どうしてするのでしょう。まだ、子どもが経験していないことを絵本で経験する。そして、その様な世界を自分で持つことによって、困った時、嬉しい時、その世界で考え、自分を解放することだと思います。現実の世界と架空の世界(絵本の世界)を行きつ戻りつしながら、子どもは育つのです。

 絵本の読み聞かせは、基本的には親子間でなされることだと思います。「保育所や図書館でよく読み聞かせをしてもらっているので家ではあまりしません。うちの子はこのおはなしもこのおはなしも知っています」というお母さんのコメントを聞いたことがあります。その子どもさんは、ストーリーはどういうものかはスラスラ言えますが、どうでしょうか?そういう時、「今日こんなお話を読んでもらったの」と子どもさんが言われた場合は、その話題で子どもさんにきちんとふれてあげてください。「ああ、うちの子はそのおはなしは知っているのね」で終わらせないでください。子どもと絵本の関わりにお母さんが無関心でいる場合、その子どもさんはおはなしの世界に入っていけません。親子間の読み聞かせは親子の絆を強めますし親子共通の思い出をつくります。

 絵本の読み手にとって、予想外の事があります。ある本を読んだ時、読み手、子ども、お母さん全員でシーンとなったことがあります。不思議な経験でした。私もこの本は自分で読むよりも人に読んでもらいたいです。

 今、子どもだけでなく、大人も傷ついたり、悩んだり、認めてほしかったりと大変な時代です。今後、子どもはもちろんですが、大人にも絵本は、ますます、必要という時代になっていくでしょう。

絵本フォーラム69号(2010年03.10)より

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