こども歳時記

〜絵本フォーラム第67号(2009年11.10)より〜

優しさがうまれる時間

 秋も深まり、木々も紅く黄色く色づいています。強い風にはっぱが舞い落ちてきます。『最後のひと葉』や『葉っぱのフレディ—いのちの旅』が頭をよぎり「いのち」に思いをめぐらせたりもします。

 もうすぐ今年が終わりますね。どんな一年でしたか。皆さん、いろいろあったと思いますが、それでもこの一年を振り返った時に、親子で笑い合えた時間や、おだやかに一緒にすごせた時間はどのくらいありましたか。そんな時間をたくさんもつことができたら、優しさもうまれるような気がします。

 幸せで、満ち足りている人がわざわざ他人を傷付ける言動をしたくなると思いますか? 優しさがうまれる時間が足りなかったな〜と感じられたお母さん、お父さん、一緒に遊んだり、お風呂に入ったりといろいろあるでしょうが、絵本も読んでくださいね。絵本の中の世界を一緒に体験していく時間が増えるほど、子どもの成長が見えたり、子どもと過ごす時間がもっと楽しくなったりしますよ。

 それに、絵本って子どもだけのものじゃあないんです。

『おこだでませんように』(くすのきしげのり/作、石井聖岳/絵、小学館)は小学校低学年の課題図書でもあったので読まれた方も多いと思いますが、子育て真っ最中のお母さん方はどう読まれるでしょうか?

 反省する人も多いかも。育児書なら理屈も含めて何ページもかけて書いてあってもピンと来ないようなことが、こんな短い絵本でこんなにわかりやすくストンと心に届くように描いてあります。

 子どもに「自分で読んどきなさーい」と一人読みさせるよりも、親子で読んでほしい、子どもに関わる大人に読んでほしい絵本です。

 こんな絵本や、物語、昔話などさまざまな絵本を親子で読んでいくうちに、親も子も成長していくのだと思います。

 ゆったりとおだやかな時間の中で、物語に入り込みわくわく、どきどき、泣いたり笑ったり安心したりと、感情体験を積み重ねることがこころを育んでくれるものだと思います。

 さて、もうすぐクリスマス。そろそろ何を用意しようかと頭を悩ますご家庭も増えてくる頃でしょうか?

 どうか全国のサンタさんが、親子を引き離す電子機器ではなく親子をつなぐあったかい絵本を届けてくれますように。

 親子をつなぐものに囲まれて生活することで、親子ともどもに優しさがうまれる時間が増えますよ、きっと。

(まつもと・なおみ)


『おこだでませんように』
(小学館)
   

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