私の絵本体験記
「絵本フォーラム」66号(2009年09.10)より
二人だけのヒミツ
西岡 恭子さん(広島県広島市)

 私は、絵本が大好きです。子どもにも好きになってほしいと思い、読み聞かせを始めました。 

 生後間もない頃は、赤ちゃんと二人で、どう接すればいいのかわからない時はいつも、絵本を読んでいました。赤ちゃんは、何の反応もありません。けれども、読んでいる時の空気で、私の声を聞いているような気がしてうれしく感じました。それから読み聞かせを続けるうちに、赤ちゃんは絵を追視し始めました。さらに、決まった場面になると、笑顔になるのです。それが、『いない いない ばあ』(童心社)でした。 

 1歳になったころ、夜空を見上げて、息子が、「ベェー」と言って、舌をだしたのです。私は、それが何かすぐに気付きました。 

 『おつきさま こんばんは』 (福音館書店)の裏表紙のおつきさまの真似だったのです。その日以来、息子は、月のことを「べえー」と言います。「今日ベェーでてるかなあ」と夜空を見上げます。べえーといって通じるのは、一緒に絵本を読んだ私だけです。1冊の絵本を通して、共有できる感動の一つだと思います。二人だけのヒミツみたいで、うれしく、愛おしく思えました。

 息子は、もうすぐ4歳になります。今は、『がんばれパトカー』 (偕成社)が愛読書です。この半年間毎日寝る前に読んでいます。昆虫類にも興味が出てきて、私の苦手なカエルの写真の絵本を「読んで」と持ってこられることは、たまりません。しかし、読み聞かせのできる時間は、子どものときしかないと思うと、今この瞬間を大切にしたいと思い、カエルと目を合わさないように、二人の共有する時間を過ごしています。(にしおか・きょうこ)

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