子どものためにと読んでいる絵本が、気がつけば自分のためになっていると感じることも多いのではないでしょうか。癒され、好奇心を掻き立てられ、自分の中の子ども心に訴えかけるような絵本もあれば、社会の現実をテーマにした絵本には、人として親として自分がどうあるべきかを考えさせられます。
『しらんぷり』(梅田俊作・佳子/作・絵、ポプラ社)は、「いじめ」をテーマに 219ページにわたり全編モノクロで描かれた絵本です。
小学 6年生の教室。4人組にいじめられるドンチャン。「ぼく」は、ドンチャンがやられるままになっているのを見て見ぬふりをします。口に出したら今度は自分がやられそうだから。ドンチャンは6年の2学期の終わりに、とうとう転校してしまいます。「ぼく」は自分の気持ちに整理をつけるため、卒業式前日のリハーサルの時に、全校生徒の前で手を挙げ、こう言うのです。
《「ぼくは、勇気がなくて……、友だちがいじめられているのに、しらんぷりばかり……、してて……」「いじめられたら、転校するしかないなんて……、そんなの、おかしいのに……。このまま、しらんぷりしたまま、卒業して……、こんな気持ちのままで、中学生になるのは、いやで……、だから……」》
いじめる人、いじめられる人、しらんぷりする人、親、教師、屋台のおじさん——登場人物の態度や言葉は、「ぼく」の心を揺さぶります。いじめるほうが悪い、やられたらやり返せばいい、嫌なら嫌だと言えばいい? 「いじめ」に真正面から向き合っているこの本を読むと、そんな言葉で簡単に解決されるものではないことに気づかされます。 |