リレー

そのままのあなたを大切にして
(兵庫・造形あそびのプレイルーム主宰/村山 喬子)


 「そのままのあなたを大切にして」
 そんな思いをもって子どもたちとかかわり続けて、もう三十年になろうとしています。

 当初、街なかのいたるところで、ガミガミと子どもを叱りつける母親の姿を見かけ「子どもの心を大切にして」のメッセージをお母さんたちにも送り続けていました。

 今、街なかでは親子が楽しそうに話している姿があふれています。「昔に比べ自分を大切に育てられている」そんな風に思われ嬉しくなります。

 自分を大切にされ《自分のままで生きていっていい》と確信をもって生きていける。それがとても大切なことだと信じています。そうであってこそ、たくさんの個性が混在する社会の中で《他人のありのままをも大切に》しながら、時に折り合いをつけ、時に戦って、迷い傷つきながらでも、自分を押しつぶすことなく生きていくことができると。そしてそれが大人になってからの成長だと。

 一人では生きていけない小さな命をさずかり、大切に育んで社会へと橋渡ししてやるのが子育ての役割。だからこそ、私がそうであったように、親は日々の生活の中で迷い、つまずきながら奮闘しています。

 母親もまた《育児書》や《頭》ではなく《自分の心》を大切にし、まっすぐに《子どもの心》とむきあったとき、迷い、悩みながらも血の通った大切なことを子どもに伝えることができるのではないかと思います。

 今も、子どもたちとのかかわりの中で感じるこもごもを、小さなエピソードとしておたよりに添えています。それがお母さんの心の中にフッと入り込み、あたたかいヒントになればいいと思いながら……。

絵本フォーラム65号(2009年07.10)より

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