絵本のちから 過本の可能性
第5期「絵本講師・養成講座」を
受講して


「絵本フォーラム」64号・2009.05.10

充実した実りある学びの日々
今井 久美子(芦屋 5期・島根県松江市)

 春の近づきを感じさせるような暖かな平成 21年2月21日。私は念願の「絵本講師・養成講座」第5期の修了証書を手にしました。初めて兵庫・芦屋市の講座会場を訪れてから約10ヶ月。今振り返ると、本当に充実した実りある学びの日々だったと思います。また今後、私のやっていきたいことが鮮明になり、確信をもてた日々でもありました。

 松江に住む私が初めて「絵本講師・養成講座」のことを知ったのは3年ほど前でした。私の住んでいる地域の公民館に〈絵本講師〉の方が講演に来られたのです。読み聞かせのボランティア活動を数ヶ所でやっていた私は、著名な方の「絵本」や「読み聞かせ」に関する著書を読んだり講演会を聴きに行ったりする中で、みんなで同じお話を聴く集団の読み聞かせの楽しさとともに、家庭で親が読むことの大切さ・必要性を感じ始めていました。

 これから親になる若い人たちや、お父さんお母さんはじめ、子どもの周りのたくさんの大人の人たちに絵本を読み聞かせることの大切さ、必要性、絵本の持つ豊かさなどを訴えていきたい。でも、どうしたらいいのだろう?ただ、絵本好きのボランティアさんでは説得力がないなあ…。そんな思いを抱いていたとき〈絵本講師〉の方との出会いがあり、その方は養成講座の受講を勧めてくださいました。直ぐにも受講したいと思いましたが、仕事もしているし、また、松江から芦屋までは距離的にも遠いし、等々不安もあり躊躇している間に第4期の受講の機会を逃してしまいました。その後1年間、そのことをとても後悔して過ごしました。その1年間にも私がやりたいと思っていることは、やはり、ボランティアという立場では弱いと改めて感じ、松江市での「ブックスタート」の再開への思いも更に募りました。どんなことがあっても〈絵本講師〉になりたい。

 こうして平成 20年4月19日、私は生まれて初めて芦屋の駅に降り立ちました。松江を朝5時12分の特急で出発し、新幹線から在来線へ。9時45分ごろの到着です。「芦屋の駅に今着いたよ!」、緊張と興奮の中、主人に電話をしたのを、今懐かしく思い出しています。

 私は8年近く絵本の読み聞かせボランティア活動をしてきました。その間、私なりに学んではきましたが、いろいろなことが未整理のままであったように思います。今回の学びの中で、その一つ一つを再確認するとともに、未整理の部分が繋がっていくのを感じました。

 毎編、講演を聴き、いろいろな思いを持ち、課題についてテキストを読んで考えたり、自分の経験と照らし合わせたりしながら、それを文章にまとめる作業の中で基本(土台)となる一本の道が拓けていきました。毎回レポートを書くのはたいへんではありましたが、やはり自分の言葉で文章にして確認してみることは大切なことでした。絵本の読み聞かせのよさやもっている力などについて、考えていたことや訴えていきたいことが纏まり、今後の活動の大きな財産となりました。

 講座については、講演の後にはテキストに基づいての講義があるものだと思っていましたが、そういった内容ではなく最初は驚きました。しかし、講演を聴き、テキストを読み、課題レポートを書きながら、これはすごい講座を受けているのだ、と感じました。ノウハウを教えてもらうだけでは、表面的に形は整うかも知れませんが本質を掴むことは出来ません。講義を聴き、テキストを読み自分の頭で考え整理することが大切です。最後に作成する課題「わたしの絵本講座」の中に生きてくるヒント、考えるきっかけといったものがたくさんありました。一方的に教えてもらうのではなく、自分で考えて深く学び取っていくこと。それが、本当の意味での「学び」だと痛感しました。また、いろいろな分野の講師の先生方からは、あたたかく優しい「こころ」、子どもたちへの「思い」など、大切なものをたくさんいただきました。心に深く染み入るゆたかな講義の数々が、今、静かに蘇えってきます。

 先日、インクの色も鮮やかな「絵本講師」と記された名刺が私のもとに届きました。嬉しくて、嬉しくて、最初の1枚を終始応援してくれた主人に渡しました。

 私の住む松江市は、県庁所在地といっても小さな市(まち)です。〈絵本講師〉として活動できる場や機会は、そんなに多くないと思いますが、私はもうただの絵本好きな読み聞かせボランティアさんではありません。日々のボランティア活動の中でも〈絵本講師〉であることに誇りと自信と責任、そして何より自覚を持って絵本を読んでいきたいと思っています。センターの先生方、充実した講座を本当にありがとうございました。

(いまい・くみこ)

<<プロフィール >>
地域の公民館での人形劇やパネルシアター等のボランティア活動を経て、絵本の世界へ。現在は、児童クラブ(学童保育)で指導員の活動をする傍ら、小学校、幼稚園、保育園、市立図書館、公民館の幼児学級で絵本の読み聞かせボランティアをしています。


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