私の絵本体験記
「絵本フォーラム」63号(2009年03.10)より
「息子の心の揺れ動きを絵本を通じて感じる」
湯浅 邦枝さん (大阪府大阪市)

 今、私のお腹には、赤ちゃんがいます。
  2 歳の上の息子は、赤ちゃんを楽しみにしてくれていて、私のお腹に向かって「おーい、あかちゃーん」と話しかけてくれます。つわりできつい時も、「気持ち悪いの? 大丈夫やからな」と言って背中をさすってくれます。息子が赤ちゃんだった頃を思うと、本当に優しい、いい子に育ってくれたなぁ…と、時々涙が出そうになることがあります。

 息子には、生後 2 ヶ月の頃から、絵本の読み聞かせをしてきました。もちろん今も、眠る前の絵本の時間は、親子の大切なふれあいタイムです。

 息子の思いやりや優しさを育ててくれたのは、毎日積み重ねてきた絵本の時間でしょう。「ゆきのひのうさこちゃん」 ( ディック・ブルーナ文・絵 石井桃子訳 ) では、寒くて泣いている鳥さんを見て、「○○ ( 自分 ) が、抱っこしてあったかくしてあげる」と言い、「ちいさなねこ」 ( 石井桃子作 横内襄絵 ) では、ピンチに陥る子猫を見て「助けてあげる」と、張り切っています。かと思ったら、同じ「ちいさなねこ」を見ても、「ママのおっぱい飲みたい」と言い出すこともありますし、「ぎゅっ」 ( ジェズ・オールバラ作・絵 ) で、抱き合うジョジョ親子を見て「○○もぎゅってして」とハグを求めてくることもあります。自立したいけど、甘えても居たい…息子の心が揺れ動いているのを、絵本を通じて感じています。

 私は、フルタイムで働きながら、家事・育児と両立しています。何足ものわらじをはき続けることに、疲れてしまう日もあります。そればかりか、自分の趣味や遊びも捨てられない煩悩の塊です。息子は、保育園が大好きで、喜んで通っていますが、我慢していることもたくさんあるでしょう。
 それでも、「ママのことだーいすき」と言ってくれるのは、毎日の絵本の読み聞かせのおかげなんじゃないかな。これから先、生まれてくる赤ちゃんも一緒に、絵本を読むのが楽しみです。(ゆあさ くにえ)

前へ次へ