何を普通で当たり前と感じ、何をおかしい・変だと感じているのでしょう。ある調査によると「死んだ人間が生き返る」と答えた小学生が 15%もいたり、人を殺す経験がしてみたいと殺人をしたり、「無人自動車」の走行と通報された小学生の無免許運転など、私たちの「当たり前」では考えられない「異常」事態が増えてきました。
子どもたちは豊かな「子ども時代」を生きる権利を持っていると思います。多様な判断材料を持たないうちから、大人と同じ情報や物事の決定権を持たせてはいけないと思います。
豊かな体験とは、真っ当な大人になっていくための必須条件だと考えます。それは、日々繰り返されている日常生活に始まり、自然や周りの人との関わり、耳から入る言葉の蓄積、様ざまな感情体験ではないでしょうか。昔なら普通にあった子どもの育つ環境も、今は意識して大人の責任で整えなくてはなりません。
そんな現代ですから、絵本をいっぱい読んであげてください。すぐれた絵本には、作者が選びぬいた言葉と絵があり、理屈やお説教ではなく、子どもにもわかるように、書いてあります。
古き良き時代のある家族の一年間の暮らしぶりを描いた『にぐるまひいて』や、子育て中の梟の親子を描いた『しまふくろうのみずうみ』などを読みますと、地に足のついた日々の暮らしや、生きていくことの土台になるような思いが胸に迫ります。
『モチモチの木』のじさまは、最後にこう言います。「〈略〉にんげん、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっと、やるもんだ。〈略〉」。また『ゆきみち』のばあちゃんは「おうおう、いたかったのう。〈略〉うんとなくがええ、うんとないておぼえておくんじゃよ」。お母さん、お父さんの声が子どもたちの心に届きますように。
(まつもと・なおみ) |