リレー

心優しく賢い子を育てるために
( 愛媛・公文鶴島ベルビーチ・福田 陽 )


 私は、公文指導者になって今年で三十年目になります。

 私の朝は朝日新聞を裏面から一面まで、なめるように読むことで始まります。

 「絵本講師養成講座のお知らせ」も、二年前の新聞記事の中に見付けました。「これは、図書館での読み聞かせや教室での国語指導の為の、基礎的な知識を得ることができるに違いない」と思い、すぐに講座申し込みの電話をしました。

 年六回の講座の内容は思っていた以上に深く、中味の濃いものでした。出来上がった一冊の本に込められた作者の想い、表現の工夫など、薄い絵本の中にも、読み手の思いもよらぬ作者の愛着やこだわりがあります。絵本を読み聞かせする者は、それらを大切に感じ、読まなければならないことが分かりました。

 一番ショックだったのは川崎医科大の片岡直樹先生の講座でした。乳児の時からテレビ・ビデオを見続けて育った幼児が、父母の声かけに反応せず、ひたすらテレビを見たがるようすに驚きました。そしてそれに近い状態の子どもたちが増えていること——。公文の先生方にはぜひ知って頂きたい講座内容と思いました。

 そんなある日、公文の事務局員に、読み聞かせの方法について話して欲しいと頼まれ、私は絵本講座で得た知識を基に、作者が絵本をどのような思いで作られているかや、読み聞かせの技術的なノウハウを話しました。そして最後に「みなさんも、絵本講師養成講座に参加して下さい」とお願いしました。

 一人が万人に伝えることはむずかしいけれど、一人が数人に、数人がまた数人へと広めていけば「絵本での子育て」が、より多くの乳幼児の保護者に伝わっていくのではないかと、思っています。

絵本フォーラム57号(2008年03.10)より

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