私の絵本体験記
「絵本フォーラム」56号(2008年01.10)より
「そんな風に感じたのね」
舛谷 裕子さん(兵庫県西宮市 )

 幼い頃よりずっと続いているもの、変わらず大好きなもの…それは絵本です。
  思い出せる一番古い記憶は2〜3歳頃に読んで貰った『おおきなかぶ』 ( 福音館書店 ) です。 読んで貰ったお部屋、母の力のこもった「うんとこしょ どっこいしょ」…今でもすぐに思い出せます。そしてなぜだか力持ちのねずみさんだと思いもっと早くねずみさんにお願いすればよかったのにと思ってしまった私…しかし、母は「みんなで協力したから抜けたのよ」とは言わず「そんな風に感じたのね」と微笑んでいました。なぜそう思ったのか自分でも不思議ですが、それを否定せずに聞いてくれた母に感謝しています。

 小学4年生頃まで毎日のように絵本を読んで貰っていました。母が忙しい時は 4 歳上の兄がいつも嬉しそうに読んでくれました。それ以降も時々はお互いに読みあい今も続いています。母に強いられた覚えはありませんがいつも感想を伝えていました。ところが一度も否定されたことがありません。今思うと、私は本当に愛されて大切に育てられたのだと痛感します。どんな感想をもっても小さい私の言うことだからと全てを受け入れてくれていたのだと感じます。そして、それは学校や社会の中で多少、嫌なことがあっても家族だけは私を許し受け入れてくれるという強い自己肯定感につながり元気にのびのびと成長できたのではないかと思います。

 私自身、 3 人の子どもの親となり自然の流れで絵本を読んでいます。子どもへの初めての絵本は兄からの贈り物でした。子どもに読んでいると、また少し違った視点で絵本を読むことが出来ます。たくさんの大人が心を込めて絵本を創り、それを大好きな人が読んでくれて私の人格が形成されたのだとわかりました。絵本は家族との思い出がいっぱい詰まった宝物です。これからも愛と思い出を大切に育んでいきたいと思います。

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