私の絵本体験記
「絵本フォーラム」53号(2007年07.10)より
「かあちゃん、とっとに負ける 」
高梨 香寿子さん( 大阪府大阪市)

 我が家の五歳の娘は、かなりの父親(とっと)っ子です。平日は、朝ごはんを一緒に食べられればいい方、休日も遊んだり入浴を企んでいてもゴロゴロされて空振りだったり、母親の私に比べれば圧倒的に接する時間の少ない仕事中心のとっと…。だからなのか、少しでも家にいることがわかると、「とっと? !! とっと?!! とっと?!!」と、トイレにまで追いかけていく始末。母親としては「そりゃ、私は居て当たり前。接する時間が長いぶん怒ることも多いし、損やわ?!」と、拗ねてみたくもなるもんです。

 さて、週末にかろうじて実現するとっととの絵本タイムですが、放っておくと、たった三秒で熟睡モードの主人は、娘が絵本を品定めしている間に余裕でグースカピースカ。あきらめた娘だけが絵本を見ていることもしばしばです。

 しかし晴れて読み聞かせに至った夜には、ほのぼの&リラックスムード漂う中、二人で仲良く枕に頭を乗せデーンと仰向けになり、主人が高く掲げ持つ絵本に、父子で見入っている様子が垣間見え、吹きだしそうになります。どうやら娘はこの絵本タイムを至福の時間のように感じているらしく、読み聞かせの軍配も当然とっとに!

  「そりゃ、たまに読む人には負けるわぁ!」とくやしがりつつ、「この光景、まだまだ続きますよう」と心の中で願うかあちゃんです。
前へ次へ