リレー

「一冊の絵本が宝物に」
(大阪・住吉保育園園長・津田 恵美子)


 
  保育園で「赤ちゃんいらっしゃい」という子育て支援事業を実施しています。
  その中で絵本についてお話ししていたときに、「絵本って高いやんねえ」「買いに行く時間もないし」「どんな絵本を買ったらいいかわからない」等のお母さんたちの声が聞こえてきました。
  インターネットで物事が瞬時に動いてしまう昨今。絵本もリサイクルで何十冊とまとめ買いができるんですねえ。「えー! 本屋さんで見て買わないの?」と目を白黒させる私です。
  我が家には仕事柄、かなりの冊数の絵本がありますが、子育て中の絵本とのかかわりを振り返ると、子どもたちの絵本の読み手はほとんど父親だったような気がします。
  父親のあぐらの中にチョコンとおさまって、字のない絵本『かえるくんどこにいるの?』(マーサー・メイヤー/作、ほるぷ出版)を繰り返し見ていました。
  繰り返しの内容は、片言の息子のおしゃべりとともにちょくちょく変化していきました。
  大のお気に入りの1冊は、今ではすっかりしみだらけで、背表紙もかなり傷んでいますが、成人した息子の本棚にきちんと納められています。
  息子いわく、自分の子どもにも読んでやりたいから、新しいかえるくんの本が欲しいとのこと(まだ結婚もしていないのですが)。
  子どものころに読んでもらった絵本は、心の栄養となり、お父さんやお母さんがすてきと思う絵本を読むひとときは、親子がゆったり過ごすホットな時間となることでしょう。
  そして、そのときの情景と一緒に子どもの心にじんわりとしみ込んで、子どもの「宝物」として抱き続けられることと思います。

絵本フォーラム49号(2006年11.10)より

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